ネットに虚偽情報横行 沖縄県知事選 候補者へ誹謗中傷多く 「ウソつき」「工作員」


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 30日投開票の沖縄県知事選を巡りインターネット上で、特定の候補者を名指しして落選を呼び掛けたり、事実かどうか根拠のない事柄や虚偽情報を並べたりして候補者の印象をおとしめる書き込みが広がっている。特定の候補者を「県民をだます選挙目的でのパフォーマンス」「大ウソつき」などと非難する内容や、「こんなのを県知事にしたら沖縄は日本から切り離される」と危機感をあおるものまでさまざまだ。

 候補者の名前の一部を、お金と関係付けて改変し、「金目当て」「沖縄を破壊する工作員」とする書き込みもある。候補者を「違法を容認している」「危険人物」と指摘し、さまざまな動画と組み合わせてまとめたサイトも出た。このサイトは候補者批判で名誉毀損(きそん)の可能性もあると指摘する記事が出た後、見ることができなくなっている。

 一部は事実を示しながら、利権を得ている印象を植え付けるような内容で、候補者を攻撃する書き込みも見られる。

 候補者が「事実無根」としたものに対しても、「どの部分がデマなのか」と候補者本人に証明を求める国会議員のツイッターもあった。

 ネット上で中傷する書き込みを受け、ある候補者の選対本部の幹部は20日付の自身のフェイスブックに「双方の候補者を一生懸命に応援するあまり、インターネット上の一部で行き過ぎた誹謗(ひぼう)中傷合戦が見受けられる。私たちが今やるべきことは相手を貶(おとし)めることではなく、相手候補者にもリスペクト(敬意)を払いながら、政策論争を正々堂々と展開することだ」と支持者に呼び掛ける事態にもなっている。

<識者談話>津田大介氏(ジャーナリスト)/公職者の流布、影響大

 昔から選挙時に虚偽情報を書いて配る「怪文書」のビラはあったが、今や8千万人がスマートフォンを持ち、4千万人がツイッターをする。ソーシャルメディアの普及により匿名で拡散しやすくなった。

 怪文書はコストがかかるが、ネットを使えば、コストをかけず自宅で好きにできてしまうのでやりやすい。一度流せば、勝手に広まる。

 しかし、選挙期間中に虚偽情報を拡散すれば、公職選挙法の虚偽事項公表罪に問われる。公職にある人が事実かどうか分からないことを流布することも社会的影響が大きい。

 2013年にインターネット選挙が解禁され、プロバイダー責任制限法に特例が設けられた。選挙運動や当選させないための活動に使う情報の流通について、候補者側から情報削除の申し出があった場合、流した本人にプロバイダーが削除の同意を求め、連絡が取れなくても2日で削除できるようになった(通常は7日)。情報に電子メールアドレスなどが表示されていないものは、2日を待たず削除できる。こうした法律があるので、候補者陣営もデマが流されたら直ちにプロバイダーに削除の申し出をした方がよい。