共産市議が賛成撤回で「普天間」意見書見送り 東京・小金井市議会


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 【東京】米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の中止を掲げ、国内全体での議論を訴える陳情を採択した東京都の小金井市議会は5日の本会議で、陳情に伴う意見書の提案を見送った。陳情に賛成していた共産党会派が賛意を翻し、意見書に賛成しない意向を示した。同議会は今後12月定例会までに調整を図るとしているが、意見書を可決するかどうかは不透明だ。陳情の提案者や関係者は、賛同者の翻意を批判した上で「論点が浮き彫りになった」「沖縄の自由を奪っている構造が明らかになったのはとても重要だ」と指摘している。

米軍普天間基地に常駐するオスプレイやヘリ=14日午後3時53分ごろ、宜野湾市の米軍普天間基地

 本会議に先立つ議会運営委員会で、共産党小金井市議団の水上洋志市議が「陳情は沖縄以外の全国全ての自治体を等しく候補地とすることが明記されており、わが党の基本的立場と異なっている。陳情に賛成した共産党市議団の態度は間違っていた」と賛意を翻し、陳情者から提案された意見書にも賛成できないとの立場を明らかにした。その上で陳情者や賛成した市議らに陳謝した。

 9月25日の市議会(24人)で陳情を採択した際には、共産党会派4人と旧民進党系会派3人を含め賛成13人、自民党会派と無所属合わせて反対は6人だった。公明党会派の4人は退席した。5日の議運では、共産党会派が態度を変える意向を示した。共産は退席する方向という。公明も態度を変える意向で、反対した場合、意見書は否決される。

 ただ9月25日に陳情を採択した議会の意思はそのまま残る。議運で渡辺大三委員長は「陳情が採択されたというのが直近の議会意思になっている。それに即して何らかの対応をしていくことについて、今定例会での対応が間に合わないので12月議会などに向けて諸般の調整をしてみようというのが流れだ」と説明した。

 議会事務局によると、通常は陳情の採択から意見書採決まで同日中に行うのが一般的だが、9月25日の普天間飛行場の辺野古移設に関する陳情では、他の委員会日程のスケジュールもあり意見書の採決は後日に先送りしていた。

〈解説〉国民的議論に逆行

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の中止を掲げ、国内全体で議論する必要性を訴えた陳情に伴う意見書提案を小金井市議会は見送った。いったんは陳情に賛成した共産党会派が賛意を翻す異例の事態となったからだ。陳情を採択した議会としての責任も問われる。沖縄の基地負担を自分の事として考える全国的な動きの先駆けとして注目されていただけに、賛成撤回はその流れに逆行していると言わざるを得ない。

 内閣府の世論調査によると国民の77・5%が日米安保は役立っていると答え、81・9%は日米安保と自衛隊で日本の安全を守ると回答している。

 保革の区別なく沖縄の歴代知事は「安保容認なら国民全体で応分の負担を」と本土に訴え続けてきた。民主党政権時代、普天間飛行場は「最低でも県外」という公約が辺野古移設に回帰し、沖縄への負担押し付けが一層可視化され、構造的差別がより強く指摘されるようになった。

 その一方で、沖縄の訴えに呼応する形で、本土の側から国民全体で議論しようとする動きが出始めた。翁長雄志前知事の提案に応え、全国知事会は日米地位協定改定を要求した。

 小金井市議会の陳情採択はその流れの一つに位置付けられる。陳情は「普天間基地の代替施設の移設場所は当事者意識を持った国民的な議論で決定すべきだ」とした上で「国内に(代替施設が)必要だという世論が多数を占めるなら、公正で民主的な手続きで決定することを求める」と訴えている。本土での移設先を決めることより国民的議論の喚起に重点が置かれている。まずはその認識が不可欠だ。

 意見書の提案は先送りされたものの、陳情採択の意義は消えていない。意見書採決に向けた市議会12月定例会までの調整に注目が集まる。 

 (滝本匠)