〈解説〉玉城知事、安倍首相と初会談 最多得票 背に訴え 振興両立へ問われる手腕


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 玉城デニー知事は、就任後1週間余で安倍晋三首相、菅義偉官房長官と初会談した。会談では平行線だった辺野古新基地建設に関し、菅官房長官が在沖米海兵隊のグアム移転と連動する考えを玉城知事に伝えたのは、「基地負担軽減」をカードに新基地建設推進を迫る、これまでと同じ手法と言える。一方で従来通りの強硬姿勢を前面に押し出さない背景には、政府与党内に今後の県内選挙への影響に対する懸念も垣間見える。

 4年前の翁長雄志知事誕生時は就任後4カ月たって会談が実現した。対応の違いは鮮明だ。玉城知事も菅官房長官も対話継続では一致しており、平行線となった辺野古新基地建設への論議は先送りされた形だ。

 玉城知事は、政府・与党が推す候補者を8万票差で破って当選しただけに、従来のように強硬姿勢で臨めば県民の反発を招くとの懸念も政府側に働いたとみられる。辺野古埋め立て承認への翁長県政による撤回に対し、政府側は効力を失わせる法的措置を用意しているが、その行使も現時点では封印したままだ。

 安倍政権はこれまでも「沖縄の基地負担軽減」を掲げ、新基地建設を推進してきた。東村高江周辺のヘリコプター発着場(ヘリパッド)の新設も、その建設が条件とされた米軍北部訓練場の一部返還を進めるためとして強行した。

 2016年の参院選では選挙を前に高江周辺のヘリパッド建設は止まっていたが、工事に反対する伊波洋一氏が大差で当選した翌日、政府は早朝から資材搬入を始め、工事を再開した。

 その先例があったため、今回の知事選でも開票翌日から辺野古新基地建設再開に向けて政府が法的措置に踏み切るのではとの見立てがささやかれた。だが12日時点でも政府はなりを潜めている。

 玉城知事は39万票の民意を背景に辺野古新基地建設反対を直接首相に訴えた。一方で併せて求めた一括交付金の増額要求や税制措置の延長の政府判断が12月に迫る。これまでも沖縄振興と関連させる形で進められた辺野古新基地の論議に玉城知事がどう挑むか注目される。 (滝本匠)