県民投票 今議会採決巡り攻防 沖縄県と国の訴訟に影響も


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 沖縄県議会米軍基地関係特別委員会は16日、辺野古新基地の是非を巡る県民投票条例案の採決を先送りした。野党の自民と中立の公明が投票用紙に記載する選択肢を追加した修正案を提出したためだ。自公は与野党の修正案を一本化し、全会一致での採決を目指すべきだと主張する。しかし与党は野党案は認めない構え。“与野党双方の歩み寄り”を求めている野党には、次回の定例会(11月議会)まで引き延ばしたい思惑が透ける。

 県民投票の条例案は「条例公布から6カ月以内」に知事が投票日を決めることになっている。採決が先送りされるほど、投票の期日も先になる。

 辺野古新基地建設反対を掲げる玉城デニー知事が新たに就任し、国と県の法廷闘争が再び始まることが予想される中、県民投票の前に工事が進めば、基地建設の既成事実化を狙う政府にとって有利となる。こうした状況も踏まえ、野党内には、県民投票をできるだけ先延ばししたい狙いがあるとみられる。それが結果的に玉城県政を追い詰めることにもなる。

 10日に開かれた前回の委員会では、質疑を終了し、与党の修正案について16日に採決することで合意していた。しかし同日午前、野党が修正案を提出することを通知。その内容は、「賛成」「反対」の選択肢に「やむを得ない」「どちらとも言えない」を加えて4択にすることなどを盛り込んだものだった。

 与党はこれを受けて同日午前、対応会議を開き、野党案について「県民の意思を的確に反映するという県民投票の趣旨に反する」との理由で認めないことで一致した。

 午後に開かれた委員会では、自民党の照屋守之委員は修正動議の提出に先立ち、「県議会として一つの案にまとめていくという努力は必要だ。持ち帰って協議しよう」と、時間をかけて検討することを繰り返し主張した。公明党も同調したが、維新は「委員会で議論すればいい」と同調せず賛同は広がらなかったため、結局、修正案は提出される運びとなった。

 自民県議は「民意を反映させるために選択肢を広げるのは重要だ」と主張する。これに対し与党県議の一人は「『自分たちは歩み寄りを提案したが、与党に反対された』と良い格好をしたいだけだ」と突き放し、自民のペースに乗らず条例案を早期に可決したい考えを示した。
 (中村万里子、山口哲人、明真南斗)