7回中6回「辺野古」 国、行政審査法を“活用” 県、対抗措置に意見書


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 名護市辺野古の新基地建設を巡り沖縄県は24日、行政不服審査法に基づき防衛省沖縄防衛局が申し立てた執行停止の却下を求める意見書を国土交通省に送付した。同日国会内であった野党の会合で示された総務省の資料によると、2005年4月以降、国の機関が同法に基づき不服を申し立てたのは7件目で、うち6件が「辺野古」絡みとなっている。同法を使って国が国に救済を求めることに批判がある中、辺野古移設をいち早く進める手段とされてきた実態が浮かび上がる。

■スピード解決

 7件のうち、辺野古移設に関して防衛省が〝身内〟である政府内の他省庁に執行停止の判断を仰ぐのは今回を含め、3件となる。過去2件はいずれも短期間で沖縄側が下した処分の執行停止が認められ、防衛省がただちに移設手続きを再開できるようになったことが特徴だ。

 2015年3月、防衛省が海底に設置したコンクリートブロックがサンゴを損傷させたなどとして、翁長雄志知事(当時)が作業停止を指示したのに対し、同省は農林水産相に対し翁長氏の指示の効力を失わせる執行停止を申し立てた。農水相はわずか4日後にこれを認めている。

 同年10月には翁長氏が辺野古埋め立て承認を取り消した。防衛省は対抗措置として、同法に基づき国土交通相に審査を請求し、執行停止も求めた。国交相はその2週間後に執行停止を決定した経緯がある。

 防衛省は今回も、沖縄側の埋め立て承認撤回により止まった工事を再開させるスピードや確実性を重視し、政府内で決着を図ることができる行政不服審査法による対抗措置を講じたとみられる。

■手法に批判

 ただこうした手法には行政法の専門家らから批判がある。

 国民の権利救済を目的とする行政不服審査法には、国の機関に「固有の資格」がある場合、不服申し立てができない規定がある。今回のケースに照らすと、辺野古埋め立てが「固有の資格」による行為なのかどうかがポイントだ。沖縄防衛局は埋め立てがあくまで一般私人と同様の立場によるものだとして「固有の資格」には該当せず、行政不服審査制度が使えると主張する。

 一方、沖縄県は今月24日に国交省に送付した意見書で「国は一般私人と同様の立場ではない」とし、「固有の立場」にある防衛省が行政不服審査法を使って執行停止を求めることは「不適法」だと指摘している。

 同日、国会内で開かれた野党でつくる「沖縄等基地問題議員懇談会」では、議員らが防衛省の対応を疑問視する声が上がった。

 原口一博衆院議員(国民民主)は、辺野古埋め立てに際して日米が海域に臨時制限区域を設け、立ち入りを禁じていることに言及。一般人が立ち入れない場所でそもそも私人による埋め立てが可能なのかとの質問に対し、防衛省の担当者は「(私人の埋め立ては)できない」と答えた。原口氏は「これ(防衛省の申し立て)が認められるなら、国民の権利を救済する行政不服審査法の本旨を外れてしまう」と強調した。