〈解説〉「辺野古」県民投票条例可決 市町村の協力 焦点 投票率向上、成功の鍵


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 辺野古新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票条例が県議会で可決されたことにより、沖縄県は今後、投票実施の実務に取り組む。地方自治法の規定により、県知事は投開票などの事務を市町村に委託し、市町村は管理執行する義務を負う。しかし強制力はなく、石垣市やうるま市など4市が事務委託について県への協力を保留している。市町村の協力がなければ実施は難しいため、県はこれまで以上に丁寧に市町村へ説明し、理解と協力を得る必要がある。県は県民投票を推進する課を設置し、市町村の支援を行う方針。今後は各市町村の対応が焦点となる。

 全市町村での実施とともに県民投票の成否の鍵を握るのが投票率だ。投票率が低ければもろ刃の剣になりかねない。1996年に実施した時には、県の広報活動に加え、高校生が自主的に模擬投票をしたり、大学生が討論会や学習会を催したりした。今後、討論会やワークショップなどで議論の場を設け、機運を高めていくことができるか、行政と市民の連携も問われる。

 住民投票条例に基づく住民投票は、新潟県巻町の原発建設計画の賛否を問う住民投票が96年に全国で初めて実施されて以来、各地で行われてきた。巻町では投票者の6割が反対し、計画は撤回された。2000年には徳島市で吉野川可動堰(ぜき)建設の賛否を問う住民投票が行われ、反対が約9割に達し、建設は中止された。法的拘束力はないものの、住民投票の結果は国策を見直させるほど重い。

 県民投票は、辺野古新基地建設への明確の民意を全国に発信するだけでなく、沖縄の将来を見据え、米軍基地問題にどう向き合うか、県民が真剣に考え、議論を深める好機となる。
 (中村万里子)