与那国議長選 投票が99回に及んだのはなぜ? 亀裂深まる議会 再び波乱も


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議長選を重ねるものの、議長が決まらない与那国町議会=10月12日、与那国町

 沖縄県与那国町議会(10議席)は議長選出が難航し、議長選を99回繰り返すまでに至った。世論に押され、与党が折れる形で事態は収束したが、与野党が1カ月余りの間、議長職を巡り真っ向から対立する姿は、与野党間の亀裂の深さを浮き彫りにした。町にはかつて島を二分した陸上自衛隊配備計画のような大きな対立案件はなく、明確に対立しているのは教育長の人事案件以外見当たらない。与野党間の不信の背景には、与党には前議会の4年間で苦汁をなめた記憶があり、野党には現町政への反発がある。

 定数6で実施された2014年の町議選でも与野党は3対3で議席を分け合い、与党から議長を選出した。採決で野党有利の状況がつくり出された結果、町提案の議案が否決される一方、野党が提案した議員定数増の議案は可決された。与党議員は「まともな議論もなく押し切られた」と振り返る。17年には補選の結果、少数与党に転落し、教育長人事の否決が続くなど、与党側はこの4年間で野党への不信を募らせてきた。

 一方の野党側には与党が支持する外間守吉町長への不信感が大きい。4期目の外間町政を「反対する者を次々に排除している。自分の支持者しか見ておらず、横暴だ」と批判し、議会で少数になれば「暴走に拍車を掛ける」との認識を町議選時から示してきた。今回の議長選を巡っても「町長が裏で糸を引いている」と主張し、町長批判を展開してきた。

 議長が決まった31日、新議長で与党の前西原武三氏に対して与野党問わず拍手を送った。その後に副議長に就任した野党の崎元俊男氏はあいさつで「(議長を)断腸の思いで引き受けてくれた。議長を支えていきたい」と述べるなど、これまでとは一転して融和ムードを演出した。

 だが与党議員の一人は「空白の1カ月で妥協点が見いだせたわけではない」と話す。前西原氏は「何かあればいつでも議長職の辞表を提出する」と述べ、野党の動きをけん制する。野党議員の一人は「自分たちがやってきたことのつけが回ってきているだけだ。そうでなければこんなに対立しない」と反発する。

 実質上の“少数与党”となった与党は当面、町提案に対する野党の対応を見定める方針だが、双方の今後の動向次第では溝はさらに深まり、再び波乱が起きる可能性がある。

 (大嶺雅俊)