政府、民意顧みず 対話要求の中、辺野古工事再開に反発 


この記事を書いた人 Avatar photo 高良 利香
報道陣の質問に答える玉城デニー知事=1日、県庁

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向け政府は1日、県の埋め立て承認撤回を受けて約2カ月止まっていた海上作業を再開した。玉城デニー知事が工事再開前の対話を求める中、工事を強行した政府に反発が強まっている。一方、対話を求め続けても辺野古新基地建設推進の姿勢を崩さない政府をどう交渉に乗せるのか、玉城知事の手腕も試されそうだ。 

 「長年にわたって沖縄県との間で話し合いを続けてきた」。菅義偉官房長官はこの日の会見で、玉城知事が「対話なき工事再開」を批判したことに反論した。菅氏は1996年の普天間飛行場返還合意から二十数年の経緯に触れ「工事を進めさせていただきたいという考え方に全く変わりはない」と語気を強めた。

■二者択一
 安倍晋三首相も同日の衆院予算委員会で、普天間飛行場返還について「沖縄の皆さんの強い要望を踏まえ」と前置きした上で、日米で「県内に代替施設を建設することを前提に全面返還に合意した」と説明した。首相はこれまでも「沖縄県民の心に寄り添う」と繰り返してきたが、言葉とは裏腹に「普天間か辺野古か」という二者択一を迫る姿勢は、県民の反発は意に介していないかのように映る。

 一方、玉城知事は「対話によって解決策を導いていきたい」と述べ、海上作業の再開を受け、対話による解決を求める姿勢を改めて前面に出した。法的な対抗手段として国地方係争処理委員会への審査申し出に向けた準備を進めるのと並行し、玉城知事は安倍首相と菅官房長官に会談を申し入れている。対話を求める一方で法廷闘争に持ち込める態勢を整え、国側に判断を迫る構えだ。

■本気度
 玉城知事は就任当初から一貫して対話を重視する姿勢を見せ、就任わずか9日目で、安倍首相らとの初面談が実現した。しかし、新基地建設を巡る協議は平行線で、政府は強行路線を突っ走る。

 玉城知事は対話による解決の糸口をどこに見いだすのか。県側の関係者からは焦りの声も漏れる。関係者の一人は「国のやり方も汚いが、県の本気度にもメスを入れなければならない。県民の思いと温度差が生じてはいけない」と指摘し、知事が強いリーダーシップを発揮する必要性を訴えた。

■「古い話」
 県が国地方係争処理委員会に審査を申し出た場合でも、同委員会が結論を出すのは3カ月以内とされており、その間は工事が進む。政府関係者の一人は、その後も工事が止まる可能性は「極めて低い」と自信を見せつつ「県民投票までには工事も進むところまで進む」と見通す。少しでも多くの既成事実を積み重ね、諦めムードを醸成させたい思惑をにじませた。

 「そんなの古い話だ」。県幹部の一人は工事をいち早く進めて県民の諦めを誘う政府の戦略をこう切り捨てた。「県民は諦めない、へこたれないと(知事選で)証明された。政府が一番よく分かっているはずだ」

 政府を挙げて力を入れた知事選に勝利し、新基地建設反対を掲げる玉城知事が誕生した今、それ以前とは違う新たな局面を迎えていることを強調した。(當山幸都、明真南斗)