沖縄で米軍機の墜落が頻発する理由 提供区域以外でも“臨時”で自由に訓練できる実情


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 12日に米海軍のFA18戦闘攻撃機が南大東島沖に墜落した事故により、日本復帰以降に県内で発生した米軍機の墜落事故は50件に上った。米軍機が年に1回を超えるペースで落ちている背景には沖縄周辺に指定されている広大な訓練海域・空域がある。それに加え「臨時訓練空域」が常態化し、区域より広い範囲で米軍が自由に訓練できる実情もある。米軍にとって“使い勝手のよい”訓練地となっている。一方で県民の命や生活、海の環境が危険にさらされている。

 県によると、沖縄周辺に設定された訓練空域・水域は、20空域(約9万5416平方キロメートル)、27水域(約5万4938平方キロメートル)ある。そこでは民間の航空機や船舶の飛行・航行が制限されている。米軍施設の返還などに伴って解除された事例はあるものの、大規模なホテル・ホテル区域やFA18が墜落したとみられるマイク・マイク区域は存続している。

 在日米軍の動向を監視する市民団体リムピースの頼和太郎編集長は「国内の民間航空に影響があれば、その国の政府がとがめるというのが普通だ。だが日本政府は米軍を優遇する。その『明文化された忖度(そんたく)』が一番の問題だ」と指摘する。

 常時提供されている訓練空域に加え、米軍の臨時訓練空域「アルトラブ(ALTRV)」が設定されている。臨時という名目のため、地図には通常掲載されないが、アルトラブの使用は常態化していると指摘されており、訓練空域は事実上、拡大している。

 沖縄近海に米軍機が墜落すると、県漁業無線協会は漁業者への注意喚起に追われる。事故のたびに県漁業協同組合連合会や県漁業協同組合長会は抗議し、再発防止を求めているが事故は繰り返されている。12日の墜落現場周辺にもマグロやセーイカ(ソデイカ)の漁場が存在する。

 米軍機事故では燃料漏れや汚染物質などの恐れもある。12日の墜落事故では目に見える燃料や残骸など漂流物は確認されていないが、桜井国俊沖縄大名誉教授(環境学)は「軍用機の墜落では何を積んでいるのか知らされない。具体的な環境への影響を把握できないことが問題だ」と指摘した。
 (明真南斗)