辺野古土砂積み込み再開 投入巡り攻防激化 沖縄県の対抗策が焦点


この記事を書いた人 Avatar photo 斎藤 学
船に積み込むため土砂を荷台から降ろすトラック=5日午後3時すぎ、名護市安和の琉球セメント

 沖縄県名護市辺野古の新基地建設を巡り、沖縄防衛局が同市安和の桟橋を使った土砂の積み込み作業を再開させた。3日の作業開始直後、県に手続きの不備を突かれた政府側は、県の指摘をかいくぐってあの手この手で作業再開にこぎつけ、土砂投入に向け前のめりな姿勢を見せる。県は対抗策の検討を急ぎ、節目となる14日に向けて攻防は激しさを増しそうだ。

メンツ

 3日の作業開始に伴い防衛省は14日の土砂投入方針を打ち出したが、その直後に県の指摘を受けて即日作業停止に追い込まれた。出鼻をくじかれた格好となり、土砂投入のスケジュールへの影響もささやかれたが「14日にこだわるのはメンツもある。できないとは言えない」(政府関係者)として、直ちに作業再開の環境を整えた。

 県の指摘のうち、桟橋の工事完了届が提出されていない点については、これに応じる形で受託業者の「琉球セメント」が提出を済ませ、解決を図った。一方、県条例に基づく届け出がないとして県が問題視した桟橋の敷地内の土砂に関しては、別の土砂を使うことで、届け出の要らない方法に変更し指摘を回避した。

 防衛省関係者は「すんなり届け出をしても県は審査に時間をかける。イエスとは言わない」と説明。あくまでもスピード重視で年内の土砂投入へのこだわりを見せる。

 県側も対抗姿勢を強め、日ごとに神経戦が続く。別の防衛省関係者は「県は工事を止めるため、遅らせるためにあらゆることを考えている。工事を進めるこちらも同じだ」と語った。

困惑と決意

 積み込み作業が再開される直前の5日午後1時すぎ、琉球セメント職員が名護市の県北部土木事務所を訪れた。職員は「工事完了届を提出したので作業は開始できると認識している」「止める理由がない」などと伝え、立ち去ったという。3日の琉球セメントに対する行政指導で、県は工事完了届の未提出などの不備や、作業の一時停止を求めていた。

 作業が再開された午後3時ごろは、県議会本会議が開かれている途中だった。作業再開の知らせは担当者から謝花喜一郎副知事に、謝花氏から玉城デニー知事に伝達された。県庁職員は県議会対応で厳しいスケジュールの中、事実確認や法的検討に追われた。

 県幹部は立ち入り検査を終えぬままの作業再開に、「常識的に止めるだろうと思っていた」と驚きを隠せない。条例に抵触しないよう作業方法を変えたことに、県幹部の一人は「まさにすり抜けだ」と唇をかんだ。

 県は今後も搬出作業の問題点を探り、新基地建設を根本から止める方策も多方面から検討する。玉城知事は5日、「あらゆることについてしっかりと協議をして取り組んでいく」と語り、あくまでも14日の土砂投入を阻止する姿勢を見せた。
 (當山幸都、明真南斗、清水柚里、嶋岡すみれ)