騒音激化、地域も拡大 三連協 嘉手納飛行経路調査


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記者団の取材に応じる三連協会長の桑江朝千夫沖縄市長(前列中央)ら=7日、北谷町砂辺の嘉手納基地第一ゲート前

 【中部】沖縄市、嘉手納町、北谷町で構成する「米軍嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協、会長・桑江朝千夫沖縄市長)の実施する目視調査や各市町の職員が独自で実施してきた調査で、米軍嘉手納基地を離着陸する米軍機の飛行ルートや騒音発生地域に変化が生じていることが分かった。調査からは、外来機が場周経路を逸脱し、これまで苦情件数が比較的少なかった市街地でも件数が増加していることが明らかになった。三連協は、嘉手納基地を離着陸する航空機の場周経路を特定し、データを蓄積した上で負担軽減に向けた運用改善を具体的に進めようと取り組み始めている。

■突出する苦情回数

 今年3月、沖縄市や北谷町では苦情件数が過去最多となり、前年同月比で約5~10倍の苦情が寄せられていた地域があった。三連協は、苦情件数が激増した理由として、同時期に飛来した外来機が「場周経路を逸脱していたため」と分析する。3月にはFA18戦闘機やF35戦闘機などの外来機が続々と飛来し、連日100デシベル以上の騒音を発生させていた。

 一方、同基地の滑走路に近接する嘉手納町では、2市町の苦情件数が最多となった3月より、昨年11月の苦情件数が334件と最多となり、傾向が異なる。嘉手納町は11月の件数について「外来機F35の飛来や訓練、嘉手納所属のF15の訓練も重なった。南北両方の滑走路を使って早朝から晩まで訓練していたため、苦情件数が多かった」と推測する。沖縄市、北谷町に比べ、滑走路に隣接しているため「どこの滑走路を使っても、どこを飛んでもうるさい」という特徴も浮かび上がる。

■異なる対応

 普天間飛行場の場周経路については、沖縄防衛局が定期的に経路を逸脱していないか調査、公表しているほか、県も経路を確認するために普天間周辺に定点カメラを設置している。防衛局によると普天間飛行場の場周経路の調査は、2004年の沖国大米軍ヘリ墜落事故がきっかけだ。事故後、日米間で普天間飛行場の場周経路が再検討され、設定された。しかし、再設定した場周経路が「守られていない」と指摘が上がったことから、防衛局が調査を始めている。

 一方、嘉手納では防衛局による場周経路の調査はされておらず、県の定点カメラ設置などの対応もない。対応の違いに、3市町の関係者から「普天間飛行場は積極的に対応するのに、なぜ嘉手納基地は」との不満も漏れる。防衛局は、嘉手納基地の場周経路の逸脱について「これまで指摘されてこなかった」と説明する。嘉手納基地の場周経路は米空軍のホームページ上で公開されているが、ほとんど周知されていない状態だ。

 そのため三連協は、調査で経路をより詳細に把握し、嘉手納基地の運用を分析することで、住民の具体的な負担軽減に取り組もうとしている。

 2008年から始まった三連協の目視調査は、これまで沖縄市、北谷町、嘉手納町の3カ所の調査地点で米軍機の飛行経路や騒音が出る際のルート、離着陸方法などを記録してきたが、調査結果を可視化したことはなかった。

 本年度、調査結果に基づいた米軍飛行ルートの可視化や騒音が発生する際の仕組み、騒音発生地域の変化などデータ(証拠)を蓄積し、場周経路の逸脱の状況を可視化することで、米軍に具体的改善策を迫りたい考えだ。

 三連協関係者は、11月に初めて実施した18航空団との意見交換会について「具体的なデータを提示したからか、米軍側の反応も良く大変有意義なものだった」と話す。今後、県などとの連携にも期待がかかる一方、これら具体的なデータをいかに活用し、負担軽減につなげていくか注目される。 (上江洲真梨子)