既成事実化 急ぐ国 辺野古きょう土砂投入 政府、対話の姿勢演出 長期戦見据える知事「後戻りできないと思わない」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
岩屋毅防衛相(左)に辺野古埋め立て中止を求める玉城デニー知事=13日午後2時27分、防衛省

 米軍普天間飛行場の移設に伴う新基地建設に向け、政府は14日、辺野古の海へ埋め立て用土砂を投入する方針だ。予定日に先立ち県は玉城デニー知事による直談判や担当課による行政指導など対応策を打ち出した。玉城知事が工事を止めた上で対話するよう求める中で、土砂投入を強行する政府の姿勢が際立つこととなった。早期の投入で埋め立てが本格化していることを印象付けたい政府に対し、県は土砂投入後を見据えた新基地建設の阻止に取り組む。

 名護市辺野古の新基地建設を巡り埋め立て土砂の投入を翌日に控えた13日、玉城知事は改めて菅義偉官房長官らに作業中止を訴えた。菅氏らは前日の県による工事中止を求める行政指導を意に介さず、土砂投入方針は変わらないことを伝えた。対話の姿勢を演出しつつ、強気の姿勢で既成事実化を進める政府に対し、県は土砂投入により「後戻りできない状況になるとは決して思っていない」(玉城知事)と、建設阻止へ長期戦を見据える。

■“誠意”を強調

 政府は9月の知事選で当選した玉城デニー知事の求めに応じる形で、辺野古移設について議論する場を設けてきた。安倍晋三首相が玉城知事と2度会談したのをはじめ、菅官房長官や岩屋毅防衛相ら閣僚も複数回会談を重ね、対話の姿勢を演出してきた。政府筋は「短期間で政府首脳とこれほど会談できる知事はいない」と語り、“誠意”を尽くしてきたと強調する。

 ただ、この間政府の「辺野古が唯一の解決策」とする立場が揺らぐことはなく、対話の姿勢は結論ありきに終始した。13日に菅官房長官や岩屋防衛相が会談に応じた背景について政府関係者は「会談の申し出を拒否するより、対話の窓を開きながら移設を進める方が得策だ」と解説する。

 岩屋氏は13日の玉城知事との3度目の会談後、記者団に「丁寧なプロセスを踏ませていただいた」と土砂投入に着手する正当性を強調した。

 土砂投入を翌日に控えた13日、辺野古の海上で作業の様子はほとんど確認されず、静けさが漂った。関係者は「準備はもう整っている」と語った。

■風潮に疑念

 13日、県から派遣された職員が辺野古の海を見つめる姿があった。玉城知事が岩屋防衛相や菅官房長官と会談を終えると、県庁では土砂投入後に備え、職員が14日の会議の日程調整や知事の会見準備に追われた。

 県幹部の一人は「(土砂投入を)するのだろう。政府が簡単に方針を変えることはない」と受け止める。「それでも対話を重視すると言っている以上、粘り強く訴えていくし、県としても言うべき事は言わなければならない」と述べた。

 県には、14日の土砂投入により「原状回復が困難になる」などと見なされる風潮に対する疑念が強くある。「後戻りできない状況になるとは決して思っていない」という玉城知事の言葉通り、県は“投入後”を見据え、新基地建設を阻止する方法を模索する。

 別の県幹部は「実際に護岸への台船接岸や土砂投入が確認されたら、違反事項として証拠を押さえ、さらに対応する」と語る。幹部らは朝から県庁で会議を開き、さらなる行政指導など対抗策を検討する。
 (當山幸都、明真南斗)