〈記者解説〉宜野湾市議会の県民投票予算否決 住民の直接請求の権利を剥奪


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県民投票予算案を否決した宜野湾市議会=20日

 宜野湾市議会が住民の直接請求に基づく県民投票を実施するための補正予算を否決した責任は、極めて重い。住民の代表である議員が、住民が直接政治に関わるための権利を奪う判断をしたからだ。

 米軍普天間飛行場の基地被害に日々苦しむ宜野湾市民に、辺野古移設に対する複雑な思いや、普天間飛行場の固定化に対する懸念があるのは事実だ。しかし、それが辺野古の埋め立て賛否を問う県民投票に反対する理由にはなっても、住民の直接請求の権利を侵す理由にはならない。

 宜野湾市議会が今月4日、県民投票の実施に反対する意見書を可決したのと同様に、住民が直接請求によって意思を示すことは等しく認められた権利である。議会が自らの意思を示す一方で、住民が意思を示す機会は剥奪するというのは、あまりに乱暴だ。

 宜野湾市民が投票権を行使できるかは今後、原案執行権を持つ松川正則市長の判断に一任される。今回、県民投票の実施を求める署名をした宜野湾市民は5264人、有効署名数は4813人分に上る。市議会と同じく、市民に選ばれた市長にも、住民の意思を尊重する責任がある。
 (長嶺真輝)