音楽で社会変えたい 高校生ラッパー カイ・トーンさん 沖縄の基地や貧困 いつか歌に


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
高校生ラップ選手権に出場し、ラップ・バトルを繰り広げるカイ・トーンさん(左)=8月、名古屋市(本人提供)

 【西原】現役高校生ラッパーの「Kai―Tone(カイ・トーン)」(18)=西原町。沖縄県内の高校生ラップバトル大会で優勝を重ね、業界では知らない者はいない。来春には西原高校を卒業するが、高校在学中にCDを出すことを目標に、日常生活での思いを歌で表現している。基地問題にも関心を深め「沖縄の意見を聞かずに辺野古の海を埋め立てるのはおかしい。沖縄人として、沖縄のことをいつか歌いたい」と話し、「音楽で人々の意識を変えたい」と夢を抱く。

 音楽好きの父親の影響で、幼少期から歌謡曲に触れる機会の多い家庭で育った。中学2年のころに人気ラッパーZeebraさんのステージ映像を見て「自分もやってみたい」と憧れた。それからわずか1週間後に、県内で開催されていた高校生ラップバトル大会に挑戦した。

 ラップ・バトルは、音楽に乗せて即興で思い浮かんだ歌詞を戦わせる。高校入学後もラップに熱中し、全国大会にも出場してきた。だが全国の壁は厚く、なかなか勝てないという。

 カイ・トーンさんは「東京や大阪のラッパーは語彙(ごい)が豊富で、韻をたくさん踏んでくる」と差を認めるものの、「幼い頃からJ―POPに慣れ親しんでいる自分の武器は、言葉をリズムに乗せること」と自信ものぞかせる。「応援してくれる家族のためにも、いつか東京で成功したい」と意気込みを語る。

 高校卒業後は沖縄大学に進学し、沖縄の歴史や文化を学ぶ予定だ。将来は米軍基地問題や貧困問題など、沖縄が抱える問題を歌にすることを考えているという。戦時中に疎開を経験した祖父からは「戦争は絶対に駄目だ」と諭されてきた。「平和」への思いは常に根底にある。

 「おじいちゃん、おばあちゃんを苦しめた米軍にいつまでも沖縄の土地を取られているのはおかしい。沖縄の問題に光を当てることで、何かを変えたい」。カイ・トーンさんは言葉に力を込めた。 (松堂秀樹)