辺野古県民投票 デニー知事3択案支持も…全県実施暗礁のまま 自民・隙突く声明 与党・態度硬化


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 辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票の全市町村実施を巡り、「辺野古」県民投票の会の方針を踏まえて玉城デニー知事も選択肢の3択への修正で全県実施を目指す方針に動いた。だが足元の県政与党が選択肢の2択と3択を巡って綱引きが続く隙を突き、自民党県連は協議の「仕切り直し」を要求する声明を発表した。自民や首長の歩み寄りに懐疑的だった与党の2択派は態度をより硬化し暗礁に乗り上げた状況が続く。

 21日夜に、全会一致に向けた条例改正を容認する方針を決めた県民投票の会の元山仁士郎代表は翌22日朝から新里米吉議長、謝花喜一郎副知事を相次いで訪れるなど精力的な動きを見せた。謝花副知事との面談後に、元山代表は「与党の方々が県民の方を向いて沖縄の歴史に耐えうるような判断を下してほしい」と記者団に述べ、3択の選択肢への修正に与党3会派が一致することに期待した。

◆衝突

 だが、2択の維持を訴える社民・社大・結と会派おきなわの2会派からは、県民投票の会の方針決定に対しても不満が上がっていた。「現在の条例制定に瑕疵(かし)はなく、投票を実施しない市長たちの責任をうやむやにしてしまう」などだ。会派おきなわの瑞慶覧功氏は「署名を書いてくれた人を裏切ることになる。3択にするなら署名からやり直さないといけない」と選択肢を譲歩することに反発を隠さない。

 「賛成」「反対」「どちらでもない」の3択で全会一致を呼び掛けていた新里議長は元山代表と面談した後も、3択について与党会派の理解が得られない以上は野党との調整には入れないとの姿勢を改めて示した。

 一方、5市長の違法性をあいまいにするという与党県議の指摘に対して新里議長は「次元が違う話だ」と反論し「県民の3割が投票できない状況が現実になろうとする状況をどうするか。今まで市長とやり合ってきたが、できれば投票したい、まとまってほしいという声がある」と瀬戸際で全会一致を目指す自身の立場を強調した。

◆紛糾

 議会内の調整が停滞する中で、元山代表から3択容認の方針を伝えられた県は、選択肢の3択修正による条例改正を認める方針を固める。玉城知事は関係者に「全県実施へ汗をかく」と意欲を伝えた。

 ただ県や与党で水面下のやり取りが続いていた22日午後4時、自民党県連は緊急の議員総会を経た上で、県民投票条例と実施日の見直しを玉城知事に求める声明を発表した。

 社・社・結、おきなわの与党2会派は22日夜、県議会内でそれぞれで緊急の会議を開いたが、自民の「仕切り直し」の要求も踏まえて議論は紛糾した。県側の3択容認の方針も伝わったが、参加した県議らは「5市を引き入れるために3択にしても担保は取れてないし、いろんな要望を突き付けてくる。現に自民がそういう声明を出した」と反発をあらわにした。

 議長提案の3択に柔軟姿勢だった共産会派も「今日の自民の動きを受けて再度協議しないといけない」と対応の見直しを示唆。「本来自民が5市に義務を履行するよう努力しないといけない。一方で県民投票の会の意思は尊重しないといけないし、全市町村が実施できる方向が何かを探らないといけない」と険しい表情を浮かべた。(与那嶺松一郎、吉田健一)