女性狙う「ロマンス詐欺」 軍人装い恋心抱かせる 県内でも被害、甘言で誘惑


社会
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女性をだまそうとした相手が送ってきた身分証明書とメッセージ(女性提供、画像を一部修正しています)

 過酷な戦地で危険に陥っているかのように装った上で、甘い愛の言葉を投げ掛け、さまざまな口実で金をだまし取る―。会員制交流サイト(SNS)や出会い系アプリで外国の軍人らを装い、女性に恋愛感情を抱かせて金をだまし取る「国際ロマンス詐欺」と呼ばれる特殊詐欺の被害が県内外で相次いでいる。被害者は軍関係者を名乗る相手と会う前に指定の金融機関口座に金を振り込んでいた。

 米国人と日本人の交際や結婚で困り事の相談を受け付けているNPO「ウーマンズプライド」代表のスミス美咲さんは「軍人は信用度が高いから、詐欺グループは軍関係者を名乗るのだろう。裕福であることを強調し、『会いたい』や『結婚したい』と頻繁に言ってくることが共通点だ。会ったことのない人に絶対にお金を送らないでほしい」と警鐘を鳴らした。

 ウーマンズプライドには昨年、同様の被害相談が県内外の20~50代女性からあった。昨年8月に相談を寄せた関西地方在住の50代の独身女性は、大手ポータルサイトの出会い系サービスに登録すると、フェイスブックにメッセージが届いた。送り主は中東の戦地で従軍する米軍の軍医を名乗り、頻繁に求愛し結婚を希望した。その上で大切な物を女性に預かってほしいと依頼。荷物を受け取るには、指定の金融機関の口座に金を振り込む必要があるとした。

 女性は相手から顔写真付き身分証明書を送ってもらい、ビデオ電話で会話もしていた。言われるがままに80万円を送金しようとしたが、相手が指定した中東への送金は金融機関が受け付けなかった。すると相手は最終的に千葉県の住所を示し、郵便局口座への振り込みを求めてきた。

 不審に思った女性がウーマンズプライドに相談し詐欺が発覚した。女性は「『(戦地から)ここで死にたくない』や『脱出して君の元へ行く』など、会ったことはないけれど心の動く言葉を並べられて流されてしまった。疑問はあったが、外国人はこういう熱い言葉を簡単に言うんだなと思った」と話した。

 女性からの相談を受けたスミスさんは、相手から送られてきた身分証明書を見て驚いた。給与等級と階級が適合しておらず、着用していた制服は階級に見合う服ではなかった。他に送られてきた白衣を着た写真は、実在する医師の写真の転用で、顔だけを合成してすげ替えていた。

 スミスさんは「被害に遭って泣き寝入りしている人はもっと多くいると思う」と指摘する。「ロマンス詐欺」との名称については「ポジティブな印象もあり不適切だ。被害拡大を防ぐためにも改名した方がいい」と語った。
 (梅田正覚、知花亜美)