工事の長期化 不可避 軟弱地盤砂ぐい 前例ない大規模


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 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を推進する政府は、軟弱地盤が広がる大浦湾の地盤改良工事で、砂のくい(砂ぐい)を地中に造り軟弱層の水分を抜く「サンドドレーン(SD)工法」と、砂ぐいを地中に入れる「サンドコンパクションパイル(SCP)工法」の二つを想定している。いずれも金属性パイプに砂を流し込んで地中に砂だけでできたくいを埋め込む方法で、政府は大浦湾に約1~2メートルの砂ぐいを計7万6699本打ち込む工事を検討している。工法は一般的とされるが、規模は事例がないほど大きく、工事の長期化は避けられない。

 軟弱地盤が確認されたのは、鋼製の棒を海底から地中に打ち込んで地盤の硬さを調べる海底ボーリング調査だ。地盤の硬さは「N値」で表される。N値とは、75センチの高さから63・5キロの重りを落とした場合、棒の先端を30センチ打ち込むのに必要な打撃回数だ。N値が少ないほど地盤が軟らかいことになる。

 そのN値がゼロの地点が大浦湾では多く見つかった。N値がゼロというのは、打ち込まずに重りを置いただけで試験用の棒が沈んでいく状態だ。本来、大型構造物を造る際にはN値50以上が必要だといわれる。

 N値ゼロのまま、その上に構造物を設置すれば、地盤沈下や液状化で建物が傾いたり舗装に凹凸ができたりする恐れがある。このため軟弱地盤の上に構造物を造るには、地盤の安定性を高める改良工事が必要となる。県は大浦湾で軟弱地盤が見つかったことで「護岸倒壊の恐れがある」として埋め立て承認を撤回する理由の一つとした。

 砂ぐいについて政府はSD工法で護岸内の埋め立て部分に約2万本を、SCP工法で護岸・岸壁部に約4万本を打ち込むことを検討している。

 防衛局が地盤改良について検討した報告書によると、1日当たりの砂ぐいの造成本数は軟弱地盤の深さなどによって異なる。軟弱な層が最も深い地点で6・4本となっている。多くは数十本ペースで、本数が最も多い地点で127・3本としている。

 大型船が入れない浅瀬では、陸上用の機材によるSD工法を用いる。両工法とも海底に突き刺したパイプから地中に砂を投入し、くいを造る。SD工法では砂を投入後、そのままパイプを引き抜いて砂ぐいを形成するのに対し、SCP工法では砂の投入と圧縮を繰り返して密度の高い砂ぐいを造る。

 SD工法は環境への負担を比較的減らせる一方、砂ぐいを打ち込んだ後、地盤から水分が抜けるのを待つ期間が必要となる。改良工事について検討した沖縄防衛局の報告書は「工事が長期化する可能性がある」と認めている。

 防衛局の報告書は、SCP工法に使う材料の例として、金属の精製過程で発生する鉄くず「スラグ」を挙げている。自然界に存在しないスラグを使った場合、水質の変化など環境影響が懸念される。大規模な改良工事では砂より調達しやすく安価なスラグを使用することも多い。一方、関係者によると、防衛局はスラグの使用は検討していない旨を県に説明している。
  (明真南斗)