直木賞「宝島」の真藤順丈さんが考える辺野古県民投票


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小説「宝島」へ込めた沖縄への思いを語る真藤順丈さん=19日、那覇市牧志のジュンク堂書店那覇店

 戦後から復帰前までの沖縄を舞台に「戦果アギヤー」をヒーローにした青春小説「宝島」で直木賞を受賞した作家の真藤順丈(じゅんじょう)さん(41)=東京都=が19日、那覇市牧志のジュンク堂書店那覇店で報道各社の取材に応じた。真藤さんは「今の日本の成り立ちをひもとく鍵がこの時代の沖縄にある」と述べた。県民投票については「投票では『はい』か『いいえ』かを表明してもらいたいと思っている。結果を受け、次はわれわれがどう動くかが大事になる」と言及した。

 昨年10月にジュンク堂書店那覇店でトークイベントを開催した時の来場者は10人ほどだったが、18日夜に開催したトークとサイン会には、約150人が詰め掛けた。

 東京や大阪でもサイン会を開いてきたが、沖縄のサイン会では小説に出てくる土地や人物と直接ゆかりのある人が感想を教えてくれたり、米軍との当時のエピソードを聞かせてくれたりし「沖縄の読者は思いがこもっていると感じた。直接読者の声が聞けて、感無量です」と述べた。

 受賞後は連日取材や講演、サイン会などが入り、この1カ月執筆ができない状態だという。沖縄の読者との会話から、新たな小説が書けそうだとし「これまで書くことがつらかったが今は早く書きたくなっている」と意欲を示した。

 沖縄の戦後史の資料や来県して取材を重ね、7年かけて書き上げた「宝島」。基地がそばにある中で生きている人たちが、簡単に基地に「賛成」「反対」は言えないだろうと推し量る。一方で、県民投票では「はい」「いいえ」のいずれかの表明に期待を寄せる。「すぐに何かが変わらなくても、動かないような壁が動くときがある。『宝島』ではまさにそのような時代を描いた」と述べ投票結果に注目している。