辺野古に代替施設ができても、普天間飛行場が返還されない可能性があるって本当?


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 米軍普天間飛行場の早期返還について日本政府は「唯一の解決策」と繰り返している。しかし米国との8項目の返還条件や軟弱地盤の存在などで早期返還の実現性は揺らいでいる。

  返還条件とは。

  日米両政府が普天間飛行場を名護市辺野古に移設することを決めた2013年の「統合計画」に明記され、17年に稲田朋美防衛相(当時)が参院外交防衛委員会で「仮定の話」とした上で「米側との前提条件が整わなければ返還されないことになる」と発言し波紋を呼んだ。その内容は「普天間飛行場代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のための緊急時における民間施設の使用の改善」など8項目あり、それが実現しなければ返還されないという。

  代替施設では確保されない滑走路ってどういうこと?

  代替施設として名護市辺野古でV字形滑走路の建設が計画されているが、その長さは1800メートルで、固定翼機には短いと言われている。そのため米軍は長い滑走路を持つ民間空港を使えるようにしてほしいと要求している。どこの民間空港かは明らかにされていないが、過去の米国の文書には那覇空港の名前が書かれていた。

 17年の米政府監査院(GAO)報告書は代替施設の滑走路は必要な長さを満たしていないと指摘し、代わりの候補地は12カ所あり、うち1カ所は県内にあるとしている。普天間飛行場の滑走路が2800メートルあるのに対し那覇空港は3000メートルで、同等の長さの民間空港は那覇空港しかないのが現状だ。

  8項目の条件はどれだけ実現しているの?

  14年8月に完了した「KC―130飛行隊による岩国飛行場の本拠地化」などの2項目だけだ。

  辺野古新基地建設では予定地の大浦湾に軟弱地盤が存在し、国は今年になって地盤改良の必要性に言及したけど費用や工期はどうなるか。

  日本政府は13年に普天間飛行場の返還期日は「22年度以降」と発表した。防衛省の当初計画では埋め立てに要する工期は5年、その後3年の施設整備を経て、辺野古の基地が完成する見通しだった。しかし安倍晋三首相は今年1月、国会答弁で地盤改良工事の必要性を認めた。軟弱地盤は最深部で水深90メートルに達し、専門家から実現を困難視する意見が出ている。

 安倍首相は安定性を確保して地盤改良できると見解を示したが、工期や工費については「確たることを申し上げることは困難だ」と述べるにとどめた。

 県は昨年、工期や工費を独自に試算した。埋め立てにかかる工費が2兆5500億円に膨らむと見通し、工期についても埋め立て工事に5年、軟弱地盤の改良工事に5年、埋め立て後の施設整備に3年かかるとして13年以上は必要と指摘した。

 これは国が改良工事が必要な軟弱地盤の概要を示す前の試算だ。新基地建設は当初計画より工期や費用を要することは必至な上、実現するかどうかも不透明になっている。

  解決策は辺野古移設しかないの?

  民主党の鳩山政権が徳之島移設を検討したが、断念し県内に回帰した。その理由が外務省の極秘文書に記されたヘリコプター部隊と演習場の距離を65カイリ(約120キロ)以内とする米軍の「基準」だった。しかし在沖米海兵隊は「公式な基準や規則はない」と否定した。後に鳩山由紀夫元首相は「外務省は今、正式な文書でないとし、誰も口をつぐんで答えない」と、官僚による情報操作だと批判している。