辺野古移設で沖縄の負担は軽減?


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 政府は米軍普天間飛行場の危険性を除去するために同飛行場を名護市辺野古に移設すると主張している。一方、県は、辺野古移設では沖縄全体の負担軽減にならないとの立場だ。

  普天間飛行場の危険性や周辺住民の負担とは。

  普天間飛行場は宜野湾市の中央に位置し、学校や病院、住宅が密集する中にあり、所属機の墜落や部品落下が相次いでいる。2004年には沖縄国際大にCH53D大型ヘリが墜落した。17年12月には宜野湾市の緑ヶ丘保育園と普天間第二小に部品が落下した。外来機も頻繁に飛来し、市が受け付ける騒音に対する苦情は、5年度連続で過去最高を更新した。周辺住民の負担は物理的にも精神的にも増している。

  では移設を進めるしかないのでは?

  普天間飛行場を飛び立ったヘリやオスプレイは飛行場周辺のみならず、県内各地や県外・国外でも事故や不具合を繰り返している。16年12月にオスプレイが名護市安部に墜落し、17年10月にCH53E大型輸送ヘリが東村高江で不時着・炎上した。

 拠点である普天間飛行場から離れた場所でこれだけ事故が発生した事実は、移設後も飛行場周辺だけでなく、米軍機は沖縄全体を飛び回り、事故の危険性は存在し続けることを示す。県は普天間の危険性除去を目指すため、13年以上かかる辺野古移設にこだわらず、既に期限を迎えた「5年以内運用停止」に取り組むべきだと訴えている。

  それでも人口密集地に飛行場があり続けるより、辺野古に移設した方が危険性は減って沖縄の負担軽減になるのでは?

  事故の可能性はなくならないが、万が一、事故が起こった場合の被害が相対的に減るという論法だ。被害を人数で比較しててんびんに掛けるような考え方で移設を進めて本当にいいのか、辺野古移設か普天間固定化の二択しか本当にないのかが問われている。

 政府は単なる「代替施設」と強調するが、県内では「新基地」だと表現されている。普天間飛行場にない弾薬庫機能や大型艦船が停泊できる護岸整備も予定されているためだ。基地の機能強化につながり、沖縄全体で見ても負担がむしろ増すと指摘されている。

  辺野古移設後は海上のみを飛ぶことになっているので、より安全で騒音も減るのでは。

  確かに政府は辺野古にV字滑走路が完成した場合の飛行経路を「基本的に海上」と説明している。集落上空を避けることを意味する。ただ100%の順守を約束したものではないことには注意が必要だ。「気象や管制の指示、運用上の理由などで、定められた経路から外れることがある」と注釈が付いている。

 米軍の運用を巡っては「例外」が拡大され「基本」となり、合意が機能しないことは珍しくない。普天間飛行場でも、日米が04年の沖縄国際大米軍ヘリ墜落事故を受けて07年に見直した飛行経路が設定されているが、この経路を大きく外れる飛行は常態化している。航空機騒音規制措置(騒音防止協定)で午後10時から翌午前6時までの飛行や地上での活動を制限することになっているが、当初の約束は形骸化している。

 それでも米軍が「運用上の必要」だと主張すれば、日本政府はそれ以上追及できない。現状で日本政府が米軍の行動を制限できない中、移設後に約束を守らせることができる保証はない。実際に政府は「場周経路から外れた飛行をする、やむを得ないケースがあることは否定できない」とする答弁書を閣議決定している。