「首相にダンスレッスン」辺野古反対動画に反響 被差別経験 糧に発信


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 名護市辺野古の新基地建設に反対するよう呼び掛ける県内在住者が作った動画がインターネットで反響を呼んでいる。「辺野古の浜で安倍晋三首相にカチャーシーを教える」という設定の動画がツイッターで視聴回数約8千回、昨年9月の県知事選で期日前投票を呼び掛けた動画は同5万3千回を超えた。動画を公開したのはツイッターで「Ryukyu Ishigame(リュウキュウ イシガメ)」のアカウント名で活動する女性(41)だ。

「ヘノコダンスレッスン」を撮影した女性(左から3人目)ら=名護市

 女性は昨年の県知事選で玉城デニー氏(現知事)を応援していたが、ネット上には玉城氏を中傷する真偽不明の情報が大量に出回っていたため、親しい人との間でも政治の話をすることをためらっていた。しかし翁長雄志前知事の妻樹子さんが集会に登壇した映像を見て感動し「歌が降りてきた」という。

 ネットで発信しようと決意し、歌と元々好きだったダンスを組み合わせ「期日前投票に行こう!」と呼び掛ける動画をスマートフォンで撮影した。女性のアカウントをフォローしている人は数人しかいなかったにもかかわらず、動画は瞬く間に拡散された。

 その後、辺野古の埋め立て中断を求めるネット上の署名活動に賛同し、仲間たちと辺野古で動画を撮影。「ヘノコダンスレッスン」と題して公開した。さらに県民投票に県内5市長が反対していた頃、投票の全県実施を呼び掛ける動画も作った。視聴回数はともに8千回を超えた。

 女性は大学進学を機に18年前、沖縄に移住した。当時は基地問題に詳しくなかったが、以前の職場で評価や昇進に関してあからさまな女性差別を経験し、仕事を教わろうとした先輩に抱きつかれるなどのセクハラも受けた。結婚していた夫からドメスティック・バイオレンス(DV)も受け、子どもを連れて逃げた。それらの体験から「構造的な差別を受けているのは女性も沖縄も同じ」と考えるようになったという。

 期日前投票の動画は、仕事や家事に忙しい同世代に向け「買い物ついデニー、玉城デニー」などとだじゃれで呼び掛けた。「佐喜真さんを応援しているけど、面白いから拡散します」という反応もあった。「ひと笑いしてからだと、反対側の立場の人とも話しやすくなる」と語る。動画をきっかけに、人の輪が広がることに手応えを感じている。

 (宮城隆尋)