障がいを特性に ポスター制作 研究後押し OISTの瀬良垣さん


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 対人関係などに障がいがあるアスペルガー症候群の当事者で、沖縄科学技術大学院大学(OIST)メディアセクションの瀬良垣香織さん(43)は、同大の催事のポスターなどのデザインを一手に引き受け、洗練された仕上がりで「なくてはならない存在」と高く評価されている。数々の苦労を重ね「分からないと相手も不安。できないことだけでなく、どうしたらできるかを伝えている」と独自の「乗り越え作戦」で周囲と良好な関係を築き、持ち前の能力を発揮している。

沖縄科学技術大学院大学の海の研究を伝える幅5メートルものポスターをデザインした瀬良垣香織さん(右)と研究をまとめた上田延朗さん=那覇市の県立博物館・美術館

 瀬良垣さんは人間関係がうまくいかず、転職を繰り返した。8年ほど前、医師に勧められて検査を受け、アスペルガー症候群と診断され「自分を責めるつらさから解放された」。

 具志川職業能力開発校で初めてデザインを学び、2016年、半年間のパートタイマーとしてOISTに。「違う特性がある自分は“宇宙人”。信頼してもらおうと必死で膨大な写真資料の整理に取り組んだ」

 正確で手早い仕事ぶりは周囲を驚かせ、空いた時間で「できる手伝いを」とポスターなどのデザインに仕事の幅を広げ、翌年にはフルタイム雇用に“昇格”した。

 この2年あまりで仕上げた作品は110点以上。瀬良垣さんは「依頼者が一番言いたいことを理解するとデザインは決まる。その聞き取りを上司や同僚がサポートしてくれた」。
 16日には、瀬良垣さんがデザインし
た、海の研究を紹介する大型ポスターの展示が県立博物館・美術館で始まった。研究をまとめたマリンサイエンスステーションの上田延朗さん(44)は「こちらの要望をしっかり聞き取り、期待以上に仕上げてくれた」と語る。

 この間、障害者就業・生活支援センターの職員も継続して寄り添ってきた。瀬良垣さんは「何重もの支援が必要だが、自分を分析する工夫と、一生懸命さがあればいつか支援者に巡り会える。障がいがあっても自分に上限を設けないで」と呼び掛けた。

 (黒田華)