なぜ? 返還され民間地になったのに…空は米軍が訓練で使用 沖縄・米軍北部訓練場2016年に一部返還後も制限空域、縮小されず


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記念撮影する(左から)マラベット米海兵隊太平洋基地司令官、宮城久和国頭村長、マルティネス在日米軍司令官、菅義偉官房長官、ケネディ米大使、稲田朋美防衛大臣、ニコルソン在沖米四軍調整官、伊集盛久東村長=2016年12月22日午後、名護市の万国津梁館

 【東京】2016年12月に米軍北部訓練場の一部が日本に返還された後も、訓練場上空に設定されている制限空域は縮小されずに維持されていることが24日、明らかになり、国会で追及された。訓練場陸域が返還され民間地となった場所でも、上空では米軍が訓練で使い続けている。原田憲治防衛副大臣は制限空域の見直しに向け関係省庁や米側と調整中としたが「(見直しの)具体的な時期を示すことは困難だ」と述べた。

 24日の衆院沖縄北方特別委員会で赤嶺政賢氏(共産)が、航空機の運航に必要な情報を国が発行し収録した「航空路誌」などを示して追及した。北部訓練場を巡っては16年12月に4010ヘクタールが返還された。

 一方、航空路誌(3月28日時点)によると、北部訓練場上空に跡地部分も含む形で制限空域が明示されている。牧野京夫国土交通副大臣は「北部訓練場が一部返還されている一方で、返還された区域の上空にある制限空域は返還前のままになっている」と認めた。

 原田防衛副大臣は、制限空域でヘリの運用などの各種訓練が行われているとし「速やかな制限空域の変更が実現するよう取り組む」とした。

 赤嶺氏は「政府は大々的に返還式典をやった事柄だ」と、基地負担の軽減を強調する政府の言葉と現実の乖離(かいり)を指摘した。その上で、空域の縮小は「米軍のニーズをおもんぱかるような問題ではない」と批判した。

中途半端な返還

 米軍基地に詳しいリムピースの頼和太郎編集長の話 土地を返しても上空は使い続けるという米軍の意思があったのだろう。地上での演習はなくなっても、近隣に影響を及ぼすような飛行訓練などはなくならない。中途半端な返還だったといえる。ただ軍事的には「土地」と「空域」は全く別の概念だ。その事実が改めてシビアに明らかになった。だからこそ基地のみならず、空域を返還させることが重要だ。特に沖縄は広大な訓練空域に囲まれている。米軍嘉手納基地にさまざまな航空機が飛来するのもそのためだ。