幼少期にいじめを受けた沖縄・コザ 歌手マイラが50年ぶりに帰郷しライブを開く理由


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 【沖縄】ようやく時が来た―。歌手のマイラ・ケイさん=東京都=とロックバンド「紫」のドラマー宮永英一さんは、共に1951年生まれのコザ(現・沖縄市)出身。約50年をへて、沖縄市中央のライブハウス「CANNON CLUB」(キャノンクラブ)で出会った2人が31日、同ライブハウスで共演する。チャリティー活動に取り組むマイラさんは、故郷でのライブを皮切りに、フィリピンの子どもたちを支援するプロジェクトを始動する。

共演する(左から)マイラ・ケイさんと宮永英一さん=24日、沖縄市中央のライブハウス「CANNON CLUB」

 フィリピン人の実父と読谷村出身の母を持つマイラさんは、小学生時代にいじめを受けた。10代で継父の実家のある米国に移住。東京の大学へ進学のために日本へ戻るも、故郷沖縄の地を踏むことはなかった。

 1984年に歌手としてデビューした。アーティスト活動と同時に、世界の恵まれない環境の子どもたちの学習を支援するなどの活動も精力的に行っている。自分のルーツを見詰め直すため、フィリピンと沖縄に行くことを決めた。

 約50年ぶりに沖縄に戻ったマイラさんは、昨年、宮永さんの紹介で小学校の同級生たちと再会した。「小さい頃の記憶がほとんどなかった」と話すマイラさん。再会により、当時の記憶がよみがえった。「お母さんは体を売っているだろう」と言われたこと、石を投げられたこと―。その日の夜はホテルで嘔吐(おうと)するほど号泣したという。「沖縄はつらい場所だったけど、チビちゃん(宮永さん)に『おかえり』と言われて、ここがホームなんだと思えた」と目を潤ませた。

 フィリピンでは日本人男性とフィリピン人女性から生まれた「ジャピーノ」と呼ばれる子どもたちが差別され、貧困に苦しんでいることを知った。自分と重ね合わせたマイラさんは、子どもや母親を救済する「ジャフィーノ基金」に協力している。

 基金への寄付のため映画制作も予定し、ライブで多くの人にフィリピンの現状を訴えたいと考える。ロックを通して出会った二人は「コザの街から再出発だ」と前を向いた。

 開演は午後8時半、前売り3千円(当日500増し)。問い合わせは(電話)090(1940)3816、090(7847)3157。