「うるさくて眠れない」 那覇の屋台村、住民から苦情


この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎

 夜空の下、涼しい風に吹かれて乾杯! 那覇市牧志~松尾エリアでこの数年増えた外席のある居酒屋は地元客だけでなく観光客も取り込み、今や観光スポットの一つになっている。一方、編集局には、周辺住民から「うるさくて眠れない」と苦情が寄せられた。どんな状況か。記者が取材した。

 向かったのは、那覇市牧志の国際通り屋台村。10連休後の土曜日も240席の外席はほぼ満席だった。中国語も飛び交い、海外からの客も多いことが分かる。

 一方、情報を寄せた住民の女性によると、午後10時をすぎても部屋には乾杯や拍手、話し声が聞こえる。「うるさくて眠れない。(防音のために)住民側が窓を閉めないといけないっておかしくないですか」。女性が顔をしかめた。

 この問題で周辺住民は昨年7月、「地域環境を守る牧志住民の会」を結成した。同会が周辺住民22人に実施したアンケートでは「騒音でテレビも聞こえないので夜は閉めきっている」「子どもの寝かしつけの時にうるさい」などの声があった。連休明けにも別の複数の住民から「叫び声が聞こえる」「人が多くて道も通れない」との苦情が編集局に寄せられた。

■議論は平行線

 住民側は、管理会社に対し、屋根の設置などの対策やマイクやスピーカーを使わないこと、外席を減らし利用時間を午後9時までにすることなどを強く求めた。住民の要望に対して屋台村や管理会社は、マイクを使ったライブイベントを昨年秋から午後8時以降は自粛。2月には午後7時以降は禁止すると確約した。午前0時前には、各店舗から見回り隊を結成し、外席の客に店内に入るよう促しているという。

 一方、現在の建物に屋根を付けるよう求める声には、建築基準法や災害時の安全性などの問題から不可能と回答。外席の利用時間を午後9時までにすることや、外席を減らすことを求めた住民の要望に、管理会社側は「営業活動に支障が生じる」と応じない構えで、議論は平行線だ。

■規制対象ならず

 そもそも人の声を規制する条例や法律はあるのか。那覇市によると、公害防止条例の規制対象になるのは工場など常時騒音を生み出す可能性がある施設のみ。「人の声は規制の対象にならない」とする。その上で市は、住民からの苦情を受けて管理会社に注意喚起をしたり、住民と管理会社の協議の場を設けたりしているが解決に至っていない。

 屋台村のオープンは2015年。屋台村近くの竜宮通りで約60年居酒屋を営む店主らは「屋台村ができてがらの悪い客が減った」と歓迎する。屋台村の敷地は元は映画館のグランドオリオンで、閉館後は10年ほど空き地だった。近くに住む男性は「暗く怖い通りだったが、屋台村ができて明るくなった」と話す。屋台村を訪れる客は観光客数の増加も相まって年々増えている。管理会社によると、17年度は約45万人が訪れた。周辺の店舗からは「地域の活性化につながっている」との評価も高い。

■観光と地域の視点

 地域住民の生活環境を守り、地域が活性化するために利のある解決策はないか―。琉球大学国際地域創造学部の越智正樹教授(観光社会学)は「当事者同士ではなく第3者がルールづくりをサポートする必要がある」と指摘。観光地になっている観点から「地方創生の文脈からできている観光コンベンションビューローが間に立つという方法もある」とも提案する。那覇市は本年度から夜の観光コンテンツ開発に向けた調査に取り組む予定だ。市は「具体的にはこれから」とするが、越智教授は「地域との議論がより重要になる」との見解を示した。

 (田吹遥子)

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