版画家・棟方志功が沖縄・宮森小米軍機墜落事故の鎮魂絵を描いていた 20年ぶりにあす公開


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棟方志功氏の水墨画の展示をはじめ、平和資料展の準備を進めるうるま市教育委員会の國吉康孝さん=28日、うるま市の石川歴史民俗資料館

 【うるま】6月1日から沖縄県うるま市の石川歴史民俗資料館で始まる平和資料展で、版画家の棟方志功氏が描いた水墨画「鎮魂の墨絵」が約20年ぶりに公開される。平和資料展は、旧石川市の宮森小学校に米軍の戦闘機が墜落した事故から6月30日で60年になるのを前に、うるま市教育委員会と石川・宮森630会が企画した。

 棟方氏の水墨画は事故が起きた1959年の翌年、作家の武者小路実篤氏の地蔵画と共に遺族らに贈られた。事故を知った佐藤日建さんという僧が、犠牲になった児童らの供養のために両氏に依頼し、描いてもらったという。棟方氏の水墨画には菩薩(ぼさつ)像と袈裟(けさ)をまとった子どもが描かれている。本人の署名や落款(らっかん)もある。所有していた当時の遺族会が98年、市に寄贈し同館が所蔵庫で保管していた。市教委の國吉康孝さん(45)は「60年の節目に公開することになった。なかなか間近で見ることのできない貴重な絵だ」と語った。

 同展ではほかにも、遺族が琉球政府の大田政作主席(当時)らに宛てた賠償金に関する直筆の陳情書や声明文の下書きなども展示される。米軍の準機関紙「星条旗」が事故の翌日、1面で報じた記事の拡大コピーの展示もある。

 630会の久高政治会長は「これまでにない規模で資料展を開く。当時の状況が分かるようにし、事故についていろいろな視点を持ってもらいたい」と来場を呼び掛けた。

 平和資料展は入場無料。毎週月曜が定休日で、7月31日まで。
 (砂川博範)