「死者の無念さと体験者の痛みの両方を私たちは知らされる」 若手研究者らが考える沖縄戦の継承 


社会
この記事を書いた人 大森 茂夫
シンポジウムで発表する(左から)大田光さん、瀬戸隆博さん、吉川由紀さん、上間祥之介さん、平仲愛里さん、北上田源さん=1日、南風原文化センター

 若手・中堅の研究者や地域史編集者ら28人が執筆し、多様な視点で沖縄戦を学べるようまとめた「沖縄戦を知る事典」の発刊記念シンポジウム(沖縄戦若手研究会主催)が1日、南風原町の南風原文化センターで開かれた。20代から50代の執筆者6人が報告し、沖縄戦研究の新しい展開や非体験世代として研究や教訓をどう継承していくかなどを語った。約200人が来場しメモを取るなど真剣な表情で聞き入った。満席となり、会場外にも席を増設するなど関心の高さをうかがわせた。

 基調報告で沖縄国際大非常勤講師の吉川由紀さん(48)は沖縄戦の調査について「私たちは死者の無念と、それを抱えて生きる体験者の痛みの両方を知らされる」と指摘し、戦没率など数字だけでは分からない実相と向き合う大切さに触れた。

 一中学徒隊資料展示室解説員の大田光さん(30)、恩納村史編さん係の瀬戸隆博さん(51)、沖縄国際大卒業生の上間祥之介さん(23)、八重瀬町教育委員会の平仲愛里さん(27)、琉球大・沖縄国際大非常勤講師の北上田源さん(37)もそれぞれが執筆したテーマについて発表した。

 学徒隊について執筆した大田さんは「戦争体験者の傷が癒えることはないと痛感している。証言だけでなく表情や言葉遣いからも思いをくみ取り、社会の一員として何ができるか考えたい」と思いを語った。

 10代半ばの少年たちがゲリラ兵として戦場に動員されたことなどを執筆した瀬戸さんは「恩納村では、米軍キャンプ・ハンセン内にも犠牲者の遺骨が残っていることが考えられる。現地調査したいが(基地の)壁がある。じくじたる思いだが、何とかこじ開けたい。北部の沖縄戦調査を深めたい」と述べた。