タンパク質合成 新技術開発 カイコ由来の無細胞 シルク社と酒造の大関


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 沖縄工業高等専門学校(名護市)発のバイオベンチャー、シルクルネッサンス(伊東昌章社長)と清酒醸造の大関(兵庫県、長部訓子社長)は19日、県庁で記者会見し、製薬会社や研究機関向けに、カイコ由来の無細胞タンパク質合成サービスを始めると発表した。従来の手法に比べ、受注から納品まで15営業日という格段に早い提供が可能となるという。

 病気に関連するタンパク質に薬の候補となる化合物を投与して反応を確認する創薬などの分野で、タンパク質の合成技術が必要とされている。

 シルクルネッサンスは、カイコの糸の主成分を作る器官「後部絹糸腺」から抽出した液体に、アミノ酸やエネルギー源、目的とするタンパク質の遺伝情報を含むmRNAを加え、生細胞を使用せずに試験管内でタンパク質を合成する。後部絹糸腺を使った無細胞タンパク質合成は、世界で初めてという。

 シルク社の技術は細胞の培養が要らないため短時間での合成が可能で、合成量も先行手法より多いという。遺伝子情報があればほとんどの種類のタンパク質を合成できるといい、細胞に毒性のあるタンパク質も合成できる。

 伊東社長は「製薬会社などでは、毎月のように対象のタンパク質が変わる。迅速な納品で需要を取り込みたい」と話した。

 大関は現在、麴菌やカイコの繭から抽出する手法でタンパク質を提供している。シルク社から後部絹糸腺を利用した合成ノウハウの実施許諾を得て、より幅広い分野で顧客の要望に応えていくという。大関が先行して8月から1件45万円でサービスを始める。10月以降はシルク社も合成サービスを始める。2020年度にシルク社は7500万円、大関は3千万円の売り上げを目標としている。