香港と沖縄、互いに理解を 香港の大学生がひめゆり学徒隊の飯上げを体験


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ひめゆり学徒らが命懸けで食料を運んだ「飯上げ」を体験する香港中文大学の学生ら=20日午前、南風原町喜屋武の黄金森

 知ることで理解につなげたい―。香港中文大学の学生らが、同大卒業生の企画した沖縄戦や沖縄の基地問題などを学ぶツアー「平和への道」で沖縄を訪れている。20日は沖縄戦でひめゆり学徒らが命懸けで食料を運んだ「飯上げ」を南風原町内で追体験した。日本による侵略の歴史を継ぐ香港、中国の学生らが沖縄戦を学ぶことで、戦争とは何かをあらゆる角度で捉えようとしている。

 企画したのは同大卒業生で旅行会社を立ち上げた薛頌平(せつしょうへい)さん(26)。ツアーに参加したのは同大の善衡書院の学生や職員9人。21日から南京大学の学生も加わる。19~24日の間、県平和祈念資料館などで沖縄戦を学び、道の駅から嘉手納基地を見学する。22日は琉球大学で同大の学生と沖縄戦、平和について意見を交わす。

 20日午前は南風原文化センターで「飯上げ」を体験。雨で足場の悪い黄金森を抜けて沖縄陸軍病院の20号壕まで運び、壕の中で当時に思いを巡らせた。同センターの保久盛陽学芸員によると、外国人による「飯上げ」体験や、香港、中国の人が沖縄戦について学びに来ることはほとんどない。「ダークツーリズムとして広がってほしい」と期待した。香港中文大1年の梁頴欣(りょうえいきん)さん(19)は「ひめゆり学徒は同じくらいの年齢だ。自分は戦争と関係ないと思ったが、歴史との距離を近く感じた」と感慨深げに語った。

 大阪大学大学院を経て沖縄県香港事務所に勤め、教育旅行を担当していた薛さんは「歴史を巡り争いはあるが、互いに理解しないといけない。知ることで理解につなげたい」と願った。