安保を取引材料にしている(前嶋和弘上智大教授)
日米安保の破棄や米軍撤退は沖縄に直結する問題だ。新しい議論をする機会かもしれないが、そもそもF35やイージスアショアなど防衛装備品などをさらに買わせるためのブラフ(はったり)かもしれない。トランプ大統領はビジネスマンとして日米安保を取引の材料に使っている。インド太平洋戦略や中国への包囲網などは日本が核となるため、日米同盟は欠かせない。仮に日米安保の破棄を宣言しても米議会が間違いなく反対する。
ただ、将来的に在日米軍が撤退する可能性はある。その場合、自衛隊を増強するなど力の空白をどう埋めるかという問題が生じる。
中国は日本の足元を見るはずで、尖閣諸島や南西地域など沖縄に揺さぶりを掛けてくることが予想される。トランプが貿易交渉のカードとして日米安保を利用すれば、さらに沖縄がもてあそばれる可能性がある。
(米国政治外交)(談)
譲歩引き出す「交渉術」(佐藤学沖国大教授)
トランプ大統領にとって最大の関心事は次の選挙で勝つことだ。そのために、支持者に受けることは何でもする。今回の発言が事実なら、思いやり予算増額など小さな話ではなく、本丸である貿易関係でどれだけ日本から譲歩を引き出せるかの交渉術と見るべきだ。
安倍政権は辺野古移設を「粛々と進める」と米側の歓心を買おうとしているが、トランプ大統領は沖縄や辺野古に関心がない。大統領選で勝つための材料を作ろうとしている段階で、自国の自動車会社や保険会社を日本で売り込もうとしている。日本の市場に手を突っ込ませろという要求を突き付けている。
トランプ大統領が在沖米軍基地の返還で補償を要求するなら、「いくらなら引き揚げるのか」と交渉する機会だ。米国に守ってもらう時代でなくなる可能性がある。国民全体で安全保障について考えるべきだ。
(政治学)(談)