「手放しでは喜べない」 沖縄在住の元患者 評価と批判入り交じる 【ハンセン病家族訴訟控訴断念】


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 ハンセン病家族訴訟で国の控訴断念を受けて、県内の元患者らは「家族被害を認めたことは良かった」と一定の評価をする一方で、国の謝罪がないことや県内と県外で被害認定に差があることから「素直に喜べない」との声も上がった。問題解決に向けて「今後、国の誠意ある対応を期待する」と声をそろえた。

 名護市済井出の国立療養所沖縄愛楽園自治会長の金城雅春さん(65)は「手放しで喜べない。判決で米統治下の責任は国に問えないとしている点は問題だ」と指摘し「県民は望んで国(の施政権)を離れたわけではない。沖縄で戦争を繰り広げて大勢の犠牲者を出した上、米国に切り売りしたのは国だ。責任を問えないなんてありえない」と憤った。

 家族が原告に加わる元患者の60代男性は、2001年の国賠訴訟時の控訴断念と違って国の謝罪がないことに触れ「家族の苦しみは元患者と同じだ。被害を認めたなら、同じように謝るべきだ」と訴えた。

 家族が原告となった元患者の金城幸子さん(78)は「勝訴が確定したことは子どもたちの力になる」とした上で「元患者も仲間のために、家族のために頑張ろうと思える。まだまだこれからだ」と話した。

 ハンセン病国立療養所宮古南静園の宮古退所者の会の知念正勝代表は「勝ちは勝ちだ」と評価した。その一方で、原告によって賠償額の差が大きい点や、20人の請求が棄却された点などについては「納得がいかないし、きちんとした対応を求めるべきだ」と指摘。「取りあえず裁判の結果は受け止めて、残った問題に引き続き向き合っていかなければならない」と語った。