放射線防護服、7消防なし 沖縄県内米軍機事故、被ばく対応不完全


この記事を書いた人 Avatar photo 宮里 努

 2004年8月、沖縄国際大学に墜落した米軍ヘリに放射性物質が搭載されていた件で、県内消防で米軍機事故への対応がいまだ整っていないことが分かった。事故当時、現場で対応した消防隊員や警察官は被ばくリスクを知らぬまま消火活動などに従事した。県内の全18消防局・本部のうち7本部に放射線災害対応可能な防護服がなく、そのうち1本部は放射線測定機器もなかった。該当する消防は予算面からの整備遅れを訴えている。15年を経た今なお完全な対策が取られていない現状が浮かび上がった。

 琉球新報は1~8日にかけて全消防と県警に質問した。県警は核・生物・化学(NBC)テロ対策に当たる専門部隊を保有しているが、「対処能力に関すること」として詳細は回答しなかった。防護服は浦添市など7本部、線量計は本部町・今帰仁村消防組合のみ未整備だった。

 事故ではヘリに搭載されていた放射性物質ストロンチウム90が現場に飛散したとされるが、機体や土壌など全てを米軍が持ち去ったため県側は調査できず、実態は不明。本紙が情報公開請求で得た内部資料で「気化」が判明している。

 米軍機墜落事故やNBC災害時などに放射能が飛散することを想定した活動指針やマニュアルは1局9本部が策定していた。米軍機墜落時などで放射線が飛散した場合に備えた訓練も1局9消防が実施していた。

 線量計や防護服が未整備で、活動指針策定もしていない本部町・今帰仁村消防組合は「予算が厳しいので、国や県主導で放射線防護の装備品の配布を検討してほしい」とした。

 線量計以外は未整備の糸満市消防も「放射線防護対策の必要性は認識しているが、予算などの兼ね合いで資機材もなく対応に苦慮している」などと回答し、厳しい予算の中で放射線防護対策は後回しになるとした。

 本紙は16年8月にも同内容の質問を全18消防にした。当時は防護服が11本部、個人・空間線量計は3本部で備わっていなかった。活動指針やマニュアルは1局4本部しか策定していなかった。(梅田正覚)