沖縄の彫刻家が元慰安婦像を制作する理由 「表現の自由は憲法で守られている」 あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」中止に抗議


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かつて従軍慰安婦だった女性を題材にした像を制作する彫刻家の金城実さん=15日、読谷村のアトリエ

 【読谷】愛知県で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で、元従軍慰安婦を象徴する少女像などを展示した「表現の不自由展・その後」が中止に追い込まれた。彫刻家の金城実さん(80)=読谷村=は「芸術に対する政治権力の不当介入だ」と指摘する。自らの手で慰安婦だった女性を表現する像を制作することで、不当介入に対し抗議の意を表明する考えだ。

 名古屋市の河村たかし市長による中止要請などを受け、危機感を持ったことが制作のきっかけとなった。「表現の自由は憲法で守られている」。ホルトノキを材料に、8日からノミやチェーンソーで少しずつ彫っている。

 制作しているのは少女像ではなく、元慰安婦の韓国人高齢女性をモデルにした像。「人間の尊厳が傷つけられたことへの怒りや悲しみを叫んでいる様子を表現した」と語る。9月中に完成予定という。

 「不自由展」同様、苦情や批判が来るのを覚悟の上で制作を決意したのは、辺野古問題で政治権力と相対する沖縄の人間として「黙っていていいのか」という思いが込み上げてきたからだという。完成した像をどうするのかはまだ決めていないが、金城さんは「政治権力への抵抗の象徴にしたい」と考えている。