再会を約束した翌日に事故…「どんな人でも罪は罪として償ってほしい」 池袋暴走事故遺族の思い 


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池袋暴走事故で亡くした娘と孫の思い出を振り返る上原義教さん=13日、那覇市泉崎

 今年4月に東京・池袋で車が暴走し、沖縄県出身の松永真菜さん(31)と長女莉子ちゃん(3)が死亡した事故で、真菜さんの父・上原義教さん(62)=那覇市=は18日、那覇市の県民広場で運転手に厳正な処分を求める署名活動を行う。「運転手はきちんと罪を償ってほしい」。高齢運転手の車両暴走で一瞬にして命を奪われた愛する娘と孫への思いを胸に、上原さんは街頭に立つ。

 「今日が私の誕生日だった。去年までは孫がバースデーソングを歌ってくれたのに…」。13日、琉球新報の取材に応じた上原さんは懐かしそうに振り返り、声を詰まらせた。

 2年前、妻をくも膜下出血で亡くした。自宅で一緒にいる時のことだった。「突然のことで別れの言葉も言えなかった。気付いてあげられなかったことでずっと自分を責めた」。心の支えになったのは真菜さんが持たせてくれたスマートフォン。一日置きにかかってくる莉子ちゃんからのテレビ電話を心待ちにした。「じいちゃん、じいちゃんってよく懐いてくれた。かわいい盛りだった」

 娘、孫との別れも突然だった。電話越しに6月に沖縄で再会することを約束した翌日、事故が起きた。「最愛の人を亡くす悲しみは2年たっても3年たっても消えない。気が狂いそうになるくらい苦しい」と言葉を絞り出した上原さん。伴侶を亡くす苦悩を知るだけに「私よりも彼のことが心配だ」と義理の息子をおもんぱかった。

 事故から約4カ月になるが、車を運転していた旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長(88)の刑事処分はいまだ出ていない。上原さんの元には飯塚さんやその家族からの謝罪もないという。事故直後、車の不調を繰り返し訴えた言動にも疑問を感じている。

 「ずいぶんと立派な方だとは聞いている。でも、どんな人であっても罪は罪として償ってほしい」。18日午前10時から午後3時までの署名活動には、親族や真菜さんの友人ら40人が参加予定という。上原さんは「2人の死が無駄にならないように訴えていきたい」と話し、拳を握りしめた。

(安里洋輔)