「国は国民の人権を守らない」 飛行停止かなわず 原告、弁護団怒りあらわ 嘉手納爆音控訴審判決


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第3次嘉手納爆音訴訟控訴審判決後、弁護士からの説明に聞き入る原告団=11日午後、那覇市楚辺の城岳公園

 第1次嘉手納基地爆音差し止め訴訟の提起から37年、第3次訴訟の控訴審判決が11日、福岡高裁那覇支部で言い渡された。原告が求めた飛行差し止めは認められず、一審の賠償額も減額された。新川秀清原告団長(82)は目を赤らめて鼻をすすり、池宮城紀夫弁護団長(79)は「本当に情けない判決だ。国が国民の生存権や人権を守らない。糾弾せざるを得ない」と怒りをあらわにした。

 空調の音が響き、静寂に包まれた法廷。池宮城弁護団長は開廷前、大久保正道裁判長に主文だけでなく、判決の内容を説明してほしいと要望した。しかし聞き入れられず、大久保裁判長はか細い声で淡々と主文のみを伝え、わずか2、3分で退廷。加えて判決の通告は、弁護団や傍聴席に十分に届かない声量で、傍聴した原告は身を乗り出し、手を当てて耳を澄ました。

 「(判決は)何だって?」「いや、分からない」。裁判官が退席した法廷には戸惑いの声が広がった。

 傍聴席で判決を聞いた原告団の福地義広副団長(58)は「唖然(あぜん)。ひどすぎる。何を言っているのか、さっぱり分からなかった」と憤った。

 判決は、またも米軍機の運用を「第三者行為論」で退けた。判決後、那覇市内で会見した弁護団の神谷誠人弁護士(58)は「沖縄における司法は砕け落ち、地に落ちた」と批判。「判決を言い渡す態度も、主文だけを読み捨て、後ろ足で砂をかけるように逃げ去った」と裁判所の対応に怒り、資料の束に置いた左拳を握りしめた。

 目を赤らめ、時折、口元に手をやって無念の表情を浮かべた新川原告団長。「基地周辺で生活する35万人の住民の願いは、静かな夜を取り戻すことだ。これからの沖縄を担う若い人に、今のような生活をさせたくない」と強調し、改めて訴えを続ける決意を示した。