情報なき“孤島”に 携帯も固定電話もネットもつながらない…石垣、竹富11時間通信途絶 「急患発生怖い」


この記事を書いた人 Avatar photo 宮里 努
各島との連絡が取れず、テレビの台風情報を確認する竹富町役場職員=1日午前7時すぎ、石垣市の町役場

 【石垣・竹富】台風18号の接近に伴い、9月30日夜から10月1日朝にかけて全島規模の通信障害が発生した沖縄県石垣市と竹富町。携帯電話や固定電話はつながらず、インターネット回線も止まり、情報がほぼ断絶された“孤島”となった。台風最接近中の「想定外」(竹富町担当者)の出来事は行政の台風情報の収集・対応に大きな支障を来し、情報が入手できない状況に住民や観光客は不安を募らせた。空港では通信障害のあおりを受けて欠航や遅延が相次ぐなど、島は混乱した。

 30日午後9時45分頃に発生した通信障害は行政の連絡体制に影響を与えた。島々で構成され、役場が石垣島にある竹富町への影響は特に大きく、各島との連絡がストップし、身動きできない状況が朝まで続いた。町防災危機管理課の通事太一郎課長は「初めての経験で、竹富町が離島なのだということを改めて実感した。手の打ちようがなく、通信インフラの再整備という課題を突きつけられた」と疲れた表情で話した。

搭乗手続きができず混み合う石垣空港=1日午前9時40分ごろ

 町内では通信障害に停電が重なる家庭も多かった。町議で町消防団西表分団長の山下義雄さん(41)は「自宅は発電機があるのでテレビも見られたが、ない家はテレビで流れる台風情報も確認できずに不安だっただろう」と話す。「全く連絡がつかない状態だったので急患発生が怖かった」と語り、「消防団も携帯電話に頼っているが、使えなくなると大変だ。やはりアナログな手段も残して、最低でも役場や医療機関とはつながる仕組みが必要だ」と強調した。

 石垣空港では1日、通信障害の影響で運航再開のめどがつかない時間がしばらく続いた。観光客らはつながらないスマートフォンを片手に不安げな表情を浮かべた。午前8時30分頃に回線が復旧し始めると、一斉に通話やメール・SNSを確認する姿が見られた。

 社員旅行で東京都から石垣島を訪れていたシステムエンジニアで中国籍の翟如昌さん(31)は「30日に戻る予定だったが台風で延び、担当するECサイトで発生した増税前のトラブル対応をホテルでしていた。完了はしたが、その後に通信がつながらなくなったので不安だ」とため息をつき、「停電は想定していたが、電話がつながらなくなるとは…。(通信は)水よりも重要な気がする」と語った。