ジュゴンを希少種指定へ/環境省が保護区検討

 
  沖縄本島周辺の海に生息し、北限の個体群として国際的にも貴重とされる国の天然記念物ジュゴンについて、環境省は3日までに、種の保存法で国内希少種に指定して保護に乗り出す方針を固めた。開発行為などを規制する生息地保護区の指定も検討する。沖縄のジュゴンは50頭前後と推定され、昨年の防衛施設庁の調査で少なくとも五頭が確認された。米軍普天間飛行場の代替施設建設が予定される名護市辺野古の近海でも多数の目撃情報があるため、工事や施設の影響をどう評価するか論議を呼びそうだ。
 
  ジュゴンは水産資源保護法などで捕獲が禁止されているが、えさのアマモが生える浅瀬の保全などの環境対策は手付かずのまま。漁網に絡まって死ぬ事故も後を絶たず、代替施設問題をきっかけに内外の自然保護団体から総合的な施策を求める声が高まっていた。
  このため環境省は、代替施設の基本計画策定後に始まる環境影響評価(アセスメント)と並行して、沖縄本島全域を対象にジュゴンや藻場の総合調査を実施。そのデータを踏まえ、早ければ本年度内の希少種指定を目指すことにした。
  浅瀬に流入する生活排水や埋め立て事業の環境影響についても調査し、本島東沿岸の広い海域を対象に保護区の指定を検討する。指定されると工作物の設置や土地の形状変更などに許可や届け出が必要となる。
  またジュゴンが刺し網などに絡まる事故を防ぐため、水産庁と連携し地元漁業関係者らに協力を求めていく。
 
 指定は歓迎/親川知事公室長
 
  県の親川盛一知事公室長は3日、「保存法にジュゴンが指定されるのは大切なこと」と述べ、県としても環境省の取り組みに歓迎の意向を示した。
  また、米軍普天間飛行場代替施設の建設が予定される名護市辺野古沖でもジュゴンの回遊が確認されたことに関連し、「辺野古沖だけに生息するわけではないが、そこの藻場も保全しながら(代替施設建設による)影響を極力抑え、それなりの環境をつくっていくことが大切だ」と語った。
 
 外圧受け方針転換
 
  生息状況の十分なデータがなく、希少種指定は難しい-。種の保存法による沖縄のジュゴン保護を求める声に対し政府は昨年まで、国会答弁などで時期尚早とする見解を繰り返してきた。環境省が一転して指定に乗り出した背景には、国際的な圧力の高まりがある。
  国際自然保護連合(IUCN)は昨年10月、日本政府にジュゴンの保護措置を取るよう勧告。米国の自然保護団体や研究者らからも日米両政府に対策を求める声が上がっていた。
  「ジュゴンを守れなかったら何のための環境省か。困難を承知で覚悟を決めた」。環境省幹部は方針転換の理由を説明する。
  「困難」の一つは米軍普天間飛行場の代替施設だ。内閣府の斉藤敏夫参事官は「ジュゴンは(予定地の)名護市辺野古沿岸だけで確認されたわけではない」と過剰反応"を警戒するが、予定地を生息地保護区に含めるかなど、微妙な調整が必要になりそうだ。
  漁網によるジュゴンの事故死の問題も、刺し網を規制する場合の漁業補償など課題が多い。自然保護団体「ジュゴンネットワーク沖縄」の棚原盛秀世話人は「本島の東沿岸はジュゴンにとって良い条件が残っている貴重な場所。何年かかってもきちんとした形で保護区を指定するべきだ」と話している。
 
 
 「生態調査も必要」/県内自然団体が訴え
 
  環境省がジュゴン保護に乗り出し、生息地保護区指定を検討することが明らかになった3日、県内の自然保護団体は一定の評価をしながらも生態調査など保護へ向けた施策の必要性を強調。名護市辺野古の移設反対派は歓迎しながらも「条件づくりになりかねない」と懸念を表明。沖合三キロの埋め立てを要望している推進派は「影響はない」との反応を示した。
  ジュゴン保護基金委員会の東恩納琢磨事務局長は「いいことだとは思う」としながらも、「その前に2-3年をかけた生態調査がなされていないことが問題。ただ保護区をつくっても意味はない」と指摘した。
  東恩納事務局長は「少なくとも金武湾以北を保護区としなければいけないはずだ。(普天間飛行場代替施設の建設予定地の)名護市辺野古をはずして保護区はありえない」と話した。
  ヘリ基地反対協の仲村善幸さんは「これを機に、基地建設を見直す方向になればいい。大きな一歩だ」と歓迎した。その一方で、「環境保護は代替協でもいわれている。基地は造る、しかしジュゴンの保護もきちんとやるという条件づくりにもなりかねない」との懸念も表した。
  また、基地建設推進派で沖合三キロ案を要望している久辺地域振興促進協議会の安里治正会長は「政府のやることで何も言うことはない」としながらも、「ジュゴンは沖合を回遊しているもので、藻場はリーフ内にしかない。沖合は特に影響はないと思う」と述べ、「保護にやぶさかではない。藻場は大事にしなければならない。その意味でも三キロ案の方がいいのではないか」と話していた。
 
 
 ジュゴン
 
  最大三メートルを超す大型の水生ほ乳類。オーストラリア沿岸を中心に東アフリカから東南アジア、琉球諸島にかけて分布し、生息数は推定で約10万頭。おとなしい性格で海草(うみくさ)類を好んで食べる。繁殖年齢に達するまで10年以上かかり、3-7年に一頭しか出産しないとされるが、生態は不明な点が多い。沖縄では明治時代まで食用に捕獲していた記録がある。
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