【島人の目】ウチナー日本語


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 模合でのおばさんたちの会話が弾む。「昨日見たDVDの映画の沖縄出身の女優さん、きれいかったさ」「ああ、あの女優ね。前よりきれいくなったよね」。日本語を教えていた身としては気になる文法上のミステイクではあるが、ここは聞き流す。

そういう私も、ヤマトゥンチュの夫に言わせるとかなり文法上の誤りを犯しているもよう。間違いを指摘されたときは、「沖縄では標準よ。問題ないけど」と言い訳をしたり。(素直でない自分、反省)
 20代から日本語を教えてかれこれウン10年。だが、ウチナーヤマトグチが染み付いている私には、教える時にアクセント、イントネーション、グラマーのハンディがある。特に私の苦手とするのは、「あげる」「もらう」「くれる」の授受文型。英語では「give」「receive」になるが、「くれる」は英語にはなく、さらに、「内と外」の日本語独特の特性があり、生徒らに理解してもらうには、幾つもの状況設定をつくり、ドリルをする。だが、私自身が途中から「くれる」「あげる」がこんがらがってきて、鋭い生徒には首をかしげられたり…。
 模合の席上、「あのウエートレスは私に水も持って来てあげないさ。だから、チップはあまりくれないことにするさ」との声が聞こえた。いぶかしがる人もなく会話が続く。
 それにしても、ウチナー日本語は、ある意味すごい。自由自在でクリエーティブにたけていて、使うおばさんたちのおおらかさにも感心しているのは、私だけ?
(鈴木多美子、ワシントンDC通信員)