芸能・文化

属国 米国の抱擁とアジアでの孤立

著者:ガバン・マコーマック著 新田 準訳
出版社:凱風社
定価:2625円
 著者は去る9月に琉球新報社池宮城秀意賞を受賞したJapan Focusの共同代表で、オーストラリア国立大学名誉教授であり日本と東アジアの政治・社会問題の研究者である。
 国の政治・社会の本質的な分析は、外来者によってなされる場合が多い。そのいい例が、フランス人のトクヴィルによる『アメリカのデモクラシー』(岩波文庫)である。この本は1831年5月11日から翌年2月20日までのわずか9カ月余りのアメリカでの調査旅行の産物である。この本は167年たった現在でもなお、アメリカ研究者の必読書とされている。

 ここで取り上げる著者も、小泉・安倍政権の政治・外交の本質を外来者の目で鋭く分析している。
 本書のタイトルに使用した「属国」は、故・後藤田正晴・元官房長官の発言から採ったようである。それにしても『属国―米国の抱擁とアジアでの孤立』という刺激的な表題に、読者は驚かれるだろう。
 原題はClient Stateである。研究社の英和大辞典によると、Clientとは、ローマ史で「ローマの隷属平民(身分的に貴族に従属しその保護下にあった)」のことである。著者の定義は「植民地でも傀儡国でもない、うわべだけでも独立国家の体裁はあるが、自国の利益よりは他の国の利益を優先させる国家」である。
 言うまでもなく、「他の国」とは米国である。本書の副題「米国の抱擁とアジアでの孤立」(それは原書にはない)は、本書の内容を端的に示している。
 本書の章立ては(1)ずっと12歳?(2)米国依存の超大国(3)日本モデルの解体(4)ブッシュ世界の日本(5)アジアの中の日本(6)憲法と教育基本法(7)沖縄―処分と抵抗(8)核大国・日本(9)精神分裂国家か?―からなり、それに日本語版の序「日本はアメリカの属国か」が追加されている。
 本書は「唯一無二の日本らしさとか米国覇権下の絶対性という幻想を乗り越え、米国との友好関係を失うことなく、日本をアジア人の国として再定義し、あたらしい道を示す新鮮な政治家の登場が求められている」と、締めくくっている。
 アメリカの力が低下している中で、もっともな諫言(かんげん)であろう。
 (宮里政玄・沖縄対外問題研究会代表)

属国―米国の抱擁とアジアでの孤立
ガバン・マコーマック
凱風社
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