<海外通信員 新年メッセージ>


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《ぺルー》赤嶺光弘/県系の活躍、一層伝えたい
 1899年、最初の日本人がペルーの大地へ第一歩を記してから、昨年で110周年の記念すべき節目の年を迎えました。ウチナーンチュ移民の先駆者は、最初の日本人移民から7年後の1906年11月、第3航海「厳島丸」で36人の男性ばかりの若きウチナーンチュが、リマ市北部のサンタクララ耕地へ入植したのが始まり。現在、約9万人の日系社会の中で7割の6万人以上がウチナーンチュといわれています。

 戦前移民の1世が日々減っていく中で、2世、3世のペルー社会での活躍が目立ってきました。現在のアラン政権下でもビクトル・ガルシア当間憲法裁判所判事、ラファエル山城国会議員、アウグスト宮城チョリーヨス区長(2期目)、リカルド我如古内務省武器弾薬取扱部長などが活躍しています。
 2011年には、県人移住105周年、県人会創立100周年、県人会館建設30周年の節目の年を迎えます。昨年11月に祝典実行委員会(フェルナンド親泊委員長)を立ち上げ、その準備に取り掛かっています。県人社会も4、5世の時代に入り、県系人意識も年々薄れていくのでは、との懸念が高まっています。
 ペルー日系社会で、県費留学生受け入れ制度は他県も実施しているが、県主催のジュニアスタディーツアーや、各市町村が実施している研修員受け入れ制度は、沖縄だけの制度で、彼らにとって母県で学び体験したことは、彼らのアイデンティティーを高め、これからのウチナーンチュ社会をリードしていく上で欠かせないものとなっています。2010年を迎え、ペルー国での県系社会の活躍ぶりをなお一層お伝えしていかなければと痛感しています。

《ニューヨーク》比嘉良治/挑戦者が励まし合って集う街
 不況にあえいだ2009年のニューヨーク、摩天楼にも強い吹雪が凍り付く。恒例のカウントダウンを迎えるニューヨーカーたちが光り輝くタイムズスクエアに集結し歓喜を上げて新年に希望を託す。
 NY沖縄県人会は、てい子与那覇・トゥーシー会長はじめ、役員のよきリーダーシップの下、会員の絆(きずな)が強く結ばれ、新年会や夏のピクニックには他府県出身者の参加数も年々増えるほど沖縄県人会の人気が高い。
 沖縄からの留学生や大学卒業後に就職した人、職を求めてNYに移住している人の数は年々少なからずとも増えている。こうした若いチャレンジャーたちがときには肩寄せ合い、互いに励まし合いながら目的に向っている様子はほほ笑ましい。
 正月2日にはヘアメークとしてNYの第一線で活躍している石垣出身の宮城まりこさんが手作りの「八重山そば」を若者に振る舞い、心身温まるパーティーを開いてくれた。
 トシコ・タカエズ展が那覇市の県立博物館・美術館で新春から始まっている。タカエズさん(88)はアメリカを代表する現代陶芸造形家だ。沖縄に強い愛情と感謝を抱き、ほぼ全作品が本人からの寄贈による回顧展。NY近郊のクエカータウンの工房で今も制作に励んでいる。

《イタリア》仲宗根雅則/沖縄はもっと激しく怒るべき
 日本で政権が代わって以来、僕は遠いイタリアで基地をめぐる政府の動きを追い続けている。米国発の情報では、普天間の海兵隊ヘリ部隊はグアムに移転する計画であり、米政府は基地の辺野古への移設を望んではいないという見解さえある中、外務、防衛、総理の3大臣を含む多くの政府要人が違う発言をする真意は何か。ただの混乱か、混乱に見せかけた深謀遠慮か。いら立ちと同時に期待もする。
 本土の大手マスコミや保守派、さらに辺野古移設を主張する利権グループなどが、それぞれの利のために勝手な主張をする中、沖縄はもうこれ以上だまされてはならない。多くの基地を押し付けられた上に、基地を盾に国に金をせびる怠け者とそしられて黙っていてはならない。北海道から鹿児島まで、自らの土地では米軍基地を拒否しておきながら、沖縄の言い分を批判する連中を放っておいてはならない。それなら皆さんの地元に基地を置け、ときっちり言い返すべきだ。もちろんその時は基地とともに補助金の類も熨斗(のし)を付けてくれてやるのは言うまでもない。
 そのためには沖縄自らが変わらなければならない。国に頼るばかりではなく、一身独立の精神で自ら身を立てる努力を続けなければならない。
 物騒なことを言うようだが、僕は今回の事案では40年前のコザ騒動のような出来事があってもいいとさえ思っている。沖縄は日米両政府にもっと激しく怒るべきだ。日本と同じ敗戦国イタリアにも米軍基地はあるが、米軍が住民を無視して騒音をまき散らしたり、犯罪者の兵をかくまう横暴が許されることは決してない。沖縄で米軍が平然とそんな行動に出るのは人種差別意識があるからだ。それを黙って許してはならない。
 日本もアメリカも民主主義国家。市民の怒りや主張を受け止める体制はできている。理を持って主張する者を民主主義は拒まない。わが故郷沖縄よ、立ち上がれ。恐れるな!

赤嶺 光弘
比嘉 良治
仲宗根 雅則