【アメリカ】客の喜び 徹底追求 サンフランシスコの日本食レストラン「すし蘭」


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著名人らも常連になったレストランで、笑顔で接客する当銘由盛さん=サンフランシスコ市

 「おいしい料理に日本酒とワインのぜいたくなセレクション、そして手の行き届いたサービス。難しいビジネスの話もスムーズにしてくれる」。グラミー賞受賞経験もある著名ギタリスト、カルロス・サンタナ氏がこう話すのが日本食レストラン「すし蘭」。

サンフランシスコ市からゴールデンゲートブリッジを渡り、高級住宅が立ち並ぶなだらかな斜面を下ると白いヨットが停泊する港を抱えたリゾート地にある人気店だ。予約客で満員の店内で、テーブルを回りながら笑顔で対応する経営者の当銘由盛さん(55)=うるま市出身=が迎え入れてくれた。
 琉大卒業後、1982年に渡米した当銘さんは85年に同店を開店。「いつも笑顔で気配りのサービス」を信条に、日本食の伝統を生かした地元米国人の嗜好(しこう)に合う独自のスタイルを確立した。2度の店舗拡張を経て年商4億円、従業員60人の大型店舗へ成長させた。一流シェフをそろえ、ミシュランで一ツ星を獲得するなど、味とサービスと満足度が高く評価されている。
 北カリフォルニア日本食レストラン協会の会長として、積極的に日本食文化の普及活動にも努めていることなどが評価され、09年に県出身者として初めて農林水産省から日本食海外普及功労者表彰を受賞した。
 当銘さんは「カジュアルでおいしいものをそろえ、楽しんで食べてもらえる空間づくりに徹した。おいしい料理をつくれるシェフがいても、もてなしができなければ駄目。大切なのはいかにして喜んでもらえるか」。
 そのために不可欠なのが「人材」とし、「英語で日本の食文化をきちんと伝える能力がある人材を適所に配置することで、楽しんで食する空間づくりへつなげられる」と人気店へと育て上げた秘訣(ひけつ)を話してくれた。
 泡盛やオリオンビールをはじめ、日本酒60種類、ワイン200種類という豊富な取りそろえは、日本酒を普及させたいという強い意志を感じさせる。「自分の仕事はお客さんの手を握ること」と話し、流ちょうな英語と会話力で、料理と最も調和する酒やワインを勧めるなど、率先して積極的な接客をしていた。
 マライア・キャリーらを育てた米著名プロデューサーのナラダ・マイケル・ウォールデンさんは十年来の常連だ。「客をえり好みしないメニューにはすしが苦手な人用の料理もたくさんある。グループで来られて、笑顔で会話が弾みリラックスできる」と話した。究極の食空間を目指したいというもてなしの心はたくさんの垣根を越えたようだ。(平安名純代通信員)