芸能・文化

『新書 沖縄読本』 ブーム終焉後を漂う今

『新書 沖縄読本』下川裕治+仲村清司著・編 講談社現代新書・945円

 「沖縄ブームの落とし前をつけなきゃいけないじゃないですか」と、本書の編著者の下川裕治氏は沖縄の知人に問いかけられたという。『好きになっちゃった沖縄』『沖縄オバァ烈伝』など沖縄でブレークした「本土の出版社が発行する沖縄本」にかかわった下川氏はむろん「沖縄ブームをつくったひとり」であろう。

 ここでの「沖縄ブーム」とは「癒しの島」「長寿の島」「沖縄移住」などで代表される、アレである。ブームが去った後、現在この島が〈「癒しの島」でも「楽園」などでもない、問題が山積した南の島にすぎない〉ことは、本土の出版社から出る沖縄本の新たな共通認識だ。そこでのキーワードは「幻想」である。さて沖縄県民としては、誰が、何に対しての「幻想」であるか、見つめ直さねばならない。「落とし前」が必要なのは実は我々の方なのだから。新書にしては分厚い本の帯に「沖縄を知ることは日本を知ることだ」とあるが、いやいや、ここはやはり「沖縄を知ることはもっと沖縄を知ることだ」と思うのだ。
 21章といくつかのコラムからなる構成で、ひとつひとつが独立したドキュメントである。音楽、繁華街、沖縄独立など内容は篠原章氏が手がけているが、この本のトーンを決定しているのは、もう一人の編著者である仲村清司氏である。本書の第1部「沖縄人のいま」で「沖縄の非長寿化」の危機を訴え、また県内の深刻な多重債務の現状、貧困がもたらす社会的クライシスに警鐘を鳴らす。こうしたいびつな社会となりうる沖縄の根っこには〈「欲」の暴走が招いた沖縄の現世利益信仰〉があるのではと推測する。第3章「沖縄と日本」では「くされ縁」ともいえる「沖縄とヤマトの間は確実に深まっているように思えてならない」と危惧する。うーむ…。沖縄ブームの終焉(しゅうえん)の向こうに見えた、絶望と希望の狭間で、ゆるく漂っている沖縄の現在を知ることはやはり苦く切なかった(“うちあたい”とも言うやつだ)。(新城和博・ボーダーインク編集者)
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 しもかわ・ゆうじ 1954年長野県生まれ。旅行作家。沖縄と東南アジアに関する著書多数。なかむら・きよし 1958年大阪市生まれのウチナーンチュ2世。作家、沖縄大非常勤講師。

新書 沖縄読本 (講談社現代新書)

講談社
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