芸能・文化

『仙台学vol・11 東日本大震災』 揺れる想い飾らず記録

 3月11日の東日本大震災は、未曽有の津波とともに、東北地方や太平洋沿岸地域を破壊しつくした。多くの命が失われ、また、被災した人々の暮らしが戻るには、なお長い時間がかかるだろう。
 私が営む小さな古書店で、仙台の地方出版社「荒蝦夷」の出版書籍を扱い始めたのは、彼らが「仙台学」という季刊雑誌を中心に、東北独自の文化・民俗や歴史を基盤にした面白い企画の書籍を次々に刊行していたからだった。

 その取り扱いを始めた矢先であった。3・11大震災は荒蝦夷にも甚大な被害をもたらした。東北中心に販売をしていた彼らは店頭在庫と取引先を同時に失った。
 しかし彼らは仮事務所を隣県に構え、震災後ひと月たって、最新号を発刊した。「仙台学vol・11 東日本大震災」は被災者が自らの手で作り出した最初の地域誌だ。
 赤坂憲雄、伊坂幸太郎、山折哲雄など、寄稿した17名の筆者は、東北在住や東北地方にゆかりのある人物たちである。一読すると、名の通った文筆家が多いのに文体までもが揺れ動き、まとまっていないようにさえ思える文章が少なくないことに驚く。
 傍観の視点でまとめられた本ではない。まだ、彼らは震災の渦中にいるのだ。私たちはこの本を読むことで、渦中にいる彼らと対話することになる。揺れ動く文体は彼らの感情の起伏であり、原稿は彼らの想いを飾らぬままに記録している。
 福島の大地の再生を自身に誓う者がいる。「文芸、芸術」の無力さにペンを置きかけた心情を吐露する作家もいる。ある者は為政者や東京、中央メディアへの怒りをあらわにする。比較的被害の少なかった者が、罪悪感をもってしまう心情を綴(つづ)る。
 ページを手繰るたび、彼らの言葉が息音までも聞こえるように生々しく語りかける。彼らに突きつけられた状況を、離れた場所にいる私たちは過去のものとしていないか? ニュースの時間はどんどん短くなっていく。私たちには何ができるのだろうか。「いま」を知るために、手にしてほしい本だ。
 (櫻井伸浩・「ちはや書房」店主)
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 あらえみし 歴史から怪談物まで、宮城県仙台市を拠点に東北文化を発信する地域出版社。被災後、山形県の仮事務所で業務を継続する。