【島人の目】イタリア危機?


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 最近は日本の誰かと連絡を取るたびに、イタリアは大変そうですね、とよく同情される。ギリシャに始まったヨーロッパの財政危機は、イタリアに飛び火し、スペインを巻き込み、フランスにまで及びかねない情勢である。

 イタリアの財政危機は、この国の札つきの宰相・ベルルスコーニを辞任に追いやるという幸運ももたらした。が、借金漬けの国家財政が破綻にひんしている事態そのものは、もちろん良いことではない。
 イタリア経済はまさしく瓦解(がかい)してしまうかもしれない。でも実を言えば、たとえそうなったとしても「だから?なに?」というのが、僕の腹の底での思いである。イタリアが財政破綻することなど本当は大したことではないのだ。
 それは大事件だが、イタリア国民は翌日から食うに困るわけではない。生活は苦しくなるだろうが、世界のたくさんの最貧国や地域の人々のように飢えて死んでいくのでは決してない。それどころか、依然としてこの地上で最も豊かな欧米世界の一員として、それなりの生活水準を維持していくだろう。
 それは、イタリア危機にあおられて、同時不況に見舞われるであろう世界の富裕国、つまり日米欧各国や豪州なども同じ。今のところそれらの国々は、依然として豊かであり続ける。イタリア破綻→世界恐慌の図式の中で真に苦しむのは、今もその時も同じ、世界の貧しい国の人々でしかないのである。
 日伊ほかの富裕国の国民は「イタリア危機」を心配する前に、少しはそれらの不運な人々に思いをはせて、自らの巨大な幸運を喜んでみることも必要ではないか。
(仲宗根雅則、TVディレクター)