辺野古アセス・評価書提出 地元同意の前提崩壊

環境影響評価(アセスメント)手続きの流れ

 沖縄防衛局は米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向けた環境影響評価(アセスメント)の評価書を週明けにも提出する。民主党は2009年衆院選で普天間移設について「最低でも県外」と訴えて政権交代を果たして以降、アセス手続きは止まっていたが、今年6月に日米間で滑走路の形状などを決定したことを受け、再開する。

一方、県内移設反対や評価書提出断念を求める沖縄側の反発は強く、アセス手続きで事業に対し地元の同意を得るという前提そのものが崩れているとの指摘もある。アセス準備書に対する知事意見について、評価書でどう対応しているのかにも注目が集まる。

 「年内ぎりぎりだと、休みが6日ほどあり、ちょっとフェアじゃない。(知事意見を)検討する時間が短すぎる」。評価書が提出されれば受け取るとの姿勢を示しながらも、仲井真弘多知事は22日、報道陣に不満をあらわにした。
 藤村修官房長官が年明け提出の検討を始めたとの情報も流れたが、同日深夜11時ごろ、沖縄防衛局から報道各社へ提出の際の対応に関する回答が伝えられた。異例の深夜の連絡に週明け提出が濃厚との空気も漂っている。

■米へのすり寄り
 政府が年内提出にこだわるのは、野田佳彦首相ほか閣僚たちが米政府に再三、年内提出を約束してきたからだ。
 米上下両院は今月15日までに普天間移設と一括とされる在沖米海兵隊グアム移転関連費約1億5千万ドル(約117億円)を全額削除した2012会計年度(11年10月~12年9月)国防権限法案をそれぞれ可決。上下両院の軍事委員会は今後、グアム移転の具体的なスケジュールなどを示さない限り、支出を認めないことでも合意している。
 こうした中、評価書提出によって、移設作業が前進していることを印象づけたい狙いがある。米側は国防総省のフロノイ次官が14日に談話を発表。評価書について「日本政府が年末までに提出することを歓迎する」と露骨に年内提出を促している状況だ。
 政府の性急な姿勢に、環境保護団体から「来年にずれ込むと新たなアセス法の規定が適用され、問題が複雑になるのを恐れているのではないか」と、環境相の助言を求めるケースが出てくることを避けようとしているとの指摘も出ている。

■科学性に疑問符
 09年4月に出された環境アセス準備書に対する、主たる知事意見は(1)住宅地上空の航空機飛行禁止や飛行高度制限に対する協定の検討(2)V字形滑走路による地元上空飛行回避で騒音や低周波が「相当低減される」という調査結果の根拠(3)辺野古集落に近いヘリパッド建設に再考を促す「地元意見への尊重」(4)ジュゴンの複数年調査や個体数「3頭」の根拠(5)サンゴや海藻草類の消失を最低限にとどめるような建設位置の再考―などを求めている。
 ほぼ全ての分野で調査の結果“影響なし”とする準備書の科学性に対し、県内の専門家や自然保護団体は「環境アセスの体をなしていない」と一貫して疑問を投げ掛けてきた。最終段階でのオスプレイの後出しも、環境アセス手続きを完全に逸脱したやり方だと批判する。
 知事意見を踏まえ、評価書で何らかの改善が図られるなどといった期待からは程遠い状況がある。「見なくても(知事意見など反映されていないことは)分かる」「『評価の結果、全ての面で影響が認められたため、基地建設はできない』というゼロオプションの評価書だったら、せめて提出される価値もあろうものを」と揶揄(やゆ)する声も上がっている。(内間健友、石井恭子)