《日に日に近くで機関銃の音が聞こえるようになり、分校も危なくなったため、當真さん一家は山へ避難することになります》
ジャングルを歩き始めて4キロ地点からだんだん食料が底を突き始めた。米軍の迫撃砲がブーンとあっちこっち破裂して、木がメリメリと倒れて、兵隊が血だらけになって倒れたり、泥をかぶったりしていた。
僕は一番下の妹をおんぶしながら逃げていたが、ある日、米軍機グラマンに見つかってしまった。これはもうやられたなぁと思ったが、低空で飛んできても撃たなかった。道もぬかるみが続き、靴もいつ脱げたか分からなくなって、はだしで歩いていた。毎日雨が降り、ヒルが何匹も足についていた。それを剥がしながら歩いた。
食料を探しに行った父がある日、水牛が死んでいるのを見つけたが、肉はもうほかの人に取られていて、骨を少しと、水牛の皮を持って帰ってきた。真っ黒い水牛の皮は、一晩中煮てもやっと生ゴムぐらいの硬さで、臭くて大変だったが食べないと死ぬから食べた。山の中でトイレをしていた時、地面で餌を持って歩いているアリを見ながら「爆弾におびえて逃げ回る必要がない。こいつらのほうが俺より幸福じゃないかなぁ」と思ったこともあった。
※続きは7月29日付紙面をご覧ください。