政治

「慰霊祭利用された」 遺族会、署名を拒否 尖閣上陸

「慰霊祭を利用して上陸したとしか思えない」と語る慶田城用武尖閣列島戦時遭難者遺族会会長=20日、石垣市内の自宅

 【石垣】尖閣列島戦時遭難者遺族会の慶田城用武会長(69)は20日、琉球新報の取材に応じ「日本の領土を守るため行動する議員連盟」の山谷えり子会長(自民党参院議員)から洋上慰霊祭を目的とした上陸許可申請に署名を求められ、拒否したことを明かした。

慶田城会長は「遺族会の気持ちを踏みにじり、慰霊祭を利用して上陸したとしか思えない」と話し、議連の洋上慰霊祭や地方議員らの魚釣島上陸を厳しく批判した。
 慶田城会長によると、約10日前に領土議連の山谷会長から電話があり、政府に提出する上陸許可申請への署名を求められた。慶田城会長は「領土を守るという議連の考えと、み霊を慰めるとの遺族会の考えに違いがある」と、依頼を断った。
 領土議連は尖閣諸島へ出港する前の18日、石垣島にある尖閣列島戦時遭難死没者慰霊之碑前で慰霊祭を開催したが、遺族会に案内はなく、参加した遺族は1人だけだった。洋上慰霊祭への参加依頼もなかった。
 尖閣列島遭難事件は沖縄戦で日本軍の組織的な戦闘が終了した後の1945年7月、石垣島から台湾に向かった2隻の疎開船が米軍の攻撃を受け、1隻が沈没、もう1隻が尖閣諸島の魚釣島に漂着し、米軍の攻撃や漂着後の餓死などで多くの犠牲者が出た事件。慰霊碑は魚釣島と石垣島の両方にある。
 事件で兄を亡くした慶田城会長は「私たちは毎年、尖閣が平和であることを願って慰霊祭を開催し、二度と戦争を起こしてはならないと誓っている。慰霊祭を利用して戦争につながる行動を起こすことに対し、無念のうちに死亡したみ霊は二度目の無念を感じていると思う」と強調した。
 領土議連や上陸した地方議員の行動に「上陸合戦で問題は解決しない。日中の緊張を高める意味で、尖閣に上陸した香港の活動家と同じように映る」と指摘。「日中ともに上陸した後の目的がなくエスカレートするばかりだ」と危惧した。
 また「上陸に異を唱える発言をすると『非国民』と批判が出る空気がある。私もよく『中国寄り』と批判を受けるが、愛国心の出方が違うだけだ。戦争に向かうような行動はしてほしくない」と話した。(稲福政俊)