歴史語る 歌、踊りに磨き 琉球オペラ・アオリヤエ


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浦添ようどれで手を取り合う尚寧王とアオリヤエ。死後100年を経てアオリヤエが浦添に移され、2人は共に眠ることになった=24日、浦添市てだこ大ホール

 劇団アオリヤエなどによる「琉球オペラ・アオリヤエ―ようどれに眠る愛」が23、24の両日、浦添市てだこホールで上演された。

尚寧王を田里直樹(テノール)、アオリヤエを宮城美幸(ソプラノ)、マグラ親方を前川佳央(バリトン)が演じ、長崎真湖(バレエ)が特別出演。3年前から公演を磨き上げてきた地元の子どもや青年たちが、県内外でプロとして活動する中堅・若手の出演者を迎え、世替わりに翻弄された王妃アオリヤエの悲劇的な物語に来場者を引き込んだ。総合演出と作曲は新垣雄、脚本と演出は嘉手納良智が務めた。
 アオリヤエは浦添尚家から尚寧を迎え、結婚。しかし国造りに没頭する尚寧と共に過ごす時間は少なく、2人の心は擦れ違う。民と共に道路建設に打ち込む尚寧らの威勢のいい踊りと、散歩中に彼らと鉢合わせしたアオリヤエや女官たちの流れるような踊り。初めは衝突し合い、いつの間にか調和していく。けんかのように見えて互いを求めている心境が投影される。
 月夜の浜で互いを思う気持ちを打ち明け、歌声を調和させる2人に会場の拍手が湧く。薩摩軍の侵攻で琉球が戦火に包まれる場面は、三司官役の低音の声楽家たち(前川、具志史郎、仲本博貴)の畳み掛ける響き合いが緊迫感を表現する。
 首里城を後にする尚寧を止めるアオリヤエ。離れ離れになる2人が歌声を調和させると、背後から照明を浴びた2人のシルエットが舞台と客席の間に降りた紗幕で重なる。引き裂かれた2人の心が常に寄り添っていることを印象付ける。
 尚寧のいない間、アオリヤエが国を治め、長い年月を経て2人は再会するが、すぐに尚寧は倒れる。一人残されたアオリヤエは「私の願いはただ一つ」と、尚寧と共に生きたいという叶わぬ願いを歌に込める。血筋の違う者を迎え入れてはならないとする玉陵の碑文にのっとり、2人は死後、別の場所に埋葬される。
 起伏に富んだ物語を表情豊かに彩ったオーケストラをはじめ、琉星太鼓とN・Sバレエ団の舞踊も流れるように調和。細部まで練られた演出、子どもたちの合唱も会場の涙を誘った。新垣雄が「3年間の集大成」と表現するとおり、公演を重ねて質を高めた劇団とプロの技が溶け合い、沖縄の歴史に根差したオペラという、可能性に満ちた花を舞台に開かせた。(宮城隆尋)