八汐荘、建て替えへ 歴史見詰め53年


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3月末で閉館する八汐荘=25日、那覇市松尾

 復帰前の1960年に完成し、自治権拡大、復帰運動など時代を象徴する多くの場面で利用されてきた那覇市松尾の八汐荘が、老朽化により今月末に閉館する。2015年に建て替えられる予定。53年間の歴史を終える建物に、関係者からは閉館を惜しむ声が寄せられている。

 八汐荘は社団法人県教職員共済会の共済会館。1960年7月に開所、「沖縄少年会館」などの建築でも知られる建築家・宮里栄一氏が設計した。
 当時、県教職員共済会の理事長だった屋良朝苗元知事が、57年に松永東文部大臣へ「沖縄にも教職員のための宿泊、福利厚生施設を」と陳情を重ね建設が実現。元沖教組委員長の石川元平さん(75)は「八汐荘を建てたことで、義務教育費や校舎建築費補助など、日本政府の援助を受けるきっかけとなった」と語る。
 67年2月24日、2万人余が立法院を包囲した教公二法阻止闘争の出発地でもあり、復帰運動の中心的な場所としても利用された。石川さんは「後に県民が初めて公選した、屋良主席誕生に至る象徴的な場所」と八汐荘の価値を語った。
 離島から那覇に出てきた教職員の宿泊にも利用され、開館当初は結婚式場としても利用された。八汐荘の川上毅支配人(53)は「『何で閉めるの』という声が多く寄せられている。老朽化し、バリアフリーの対応もできないので仕方ない」と肩を落とした。
 30日までの宿泊客を最後に実質的な営業を終える。建物内の県教職員共済会は8月まで業務を続けるため、建物は9月以降に取り壊される。同共済会は2015年2月に新たな施設に建て替える予定だが、新施設に八汐荘の名称を残すかは未定という。