式典「暗黙の侮辱」 ガバン・マコーマック氏


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政府の式典開催について「沖縄に対する暗黙の侮辱だ」と批判したマコーマック氏=25日、米ワシントン

 【米ワシントン25日=島袋良太本紙特派員】日本近現代史研究者でオーストラリア国立大名誉教授のガバン・マコーマック氏が25日、滞在中の米ワシントンで本紙インタビューに応じた。

28日に「主権回復」式典を開く安倍政権に対して「実態は対米追従だが、儀式や言い回し、国家賛美の姿勢を通してそれを覆い隠そうとしている」との見方を示し、式典について「沖縄に対する暗黙の侮辱だ」と批判した。発言要旨は次の通り。

 ―式典をどう見るか。
 「安倍晋三首相は美しい国、新しい国づくりを提唱してきた。戦前の価値観に回帰する憲法をつくるため、国家に『誇り』を持つよう歴史の修正を試みてきた。自衛隊の国防軍化や愛国心教育の推進、国旗掲揚や国歌斉唱の義務化などの動きを続けている」
 「日本はジャパン・ハンドラー(日本の政策に影響を与える米国の知日派官僚ら)を通じて米国の国益にかなう政策をくみ取り、実行してきた。一方でその屈辱的な国の在り方は正当化せねばならず、安倍首相は勇ましい姿勢や国家賛美の姿勢を通し、実態を覆い隠そうとしているのだろう。『ねじれ国家体制』を最も体現していると言える。その結果が今回の式典だ」
 「4月28日を主権回復の日と宣言することは、(対日講和条約で日本から切り離された)沖縄に対する暗黙の侮辱だ。しかも安倍政権はわざわざ完全な主権回復と付け加え、侮辱の度合いを強めた。日本を変え、沖縄をつくり変えるため、もしくは押しつぶすための意図的な行為にすら映る」
 ―同条約で沖縄が切り離された背景をどう見るか。
 「講和条約締結時は米国が次なる大戦に備え、この地域の覇権を強めようとしていた。日本は米国に二度と歯向かえないよう武装解除させられていた。(米国が沖縄などの占領を続けるよう望むとのメッセージを出した)昭和天皇は日本から沖縄を切り離す手法で『平和な本土』と『戦争状態が続く沖縄』を兼ね合わせ、(国際社会復帰に向け)米政府を説得する提案の中心的役回りを果たしたのだろう。しかしその後の沖縄の米軍基地は日本を守る役割は小さく、むしろ朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争に使われてきた」
 ―4月28日に対する県民の視点については。
 「(日米政府に異議を申し立てる)県民の奮闘には偉大な価値があり、現代史の支えになるほど重要だ。民主主義、立憲主義、真実の追求のため力を注ぎ続ける県民から、私は多くを学んでいる。先日、英語と日本語で出版した『沖縄の〈怒〉―日米への抵抗』は今後ハングル語や中国語版も発行する。沖縄のことを広く知ってもらいたい」